第5章 投影
…それにしても…
執事を呼ぶとすぐに来ると言うのは本当らしい。沖矢昴を迎えに行った筈の執事が名前に名前を呼ばれて何処から現れたのか見つけられなかった。
それだけじゃない、医者の筈の彼もあの身体能力だ。
安室「…凄いですね、彼」
名前「……どうかな…“厄介”だと感じているけど。私は。」
安室「…?それはどういう…」
名前「彼奴が最後に飛んだ場所は彼奴以外誰も次の足場に届かないポイントだ。…態々其処を選んだのはどういう了見なんだろうな。…」
フィルを少し睨んでいるようにも見える名前。
ーー…そんな顔は似合わない…ーー
彼女に手を伸ばして自分の腕の中に収めると名前は目を丸くさせながら俺を見上げた。
降谷「…“似合わない”。…そんな顔。そう思うと抱きしめたくなって…すみません。でもほら、貴方の表情を変える事は成功しました。」
名前は困ったように笑った。
そうこうしている間に降りて来た執事とフィルが名前にそろそろじゃないかと声をかける。執事はバングルを名前の腕に通し直した。
名前「…安室さんはどうする?此処を使ってもいいし…キャルの測定観に来る?」
腕を緩めると名前は抜け出しながら此方を見て話した。
安室「そうですね此処のトレーニングは僕には合わない様なので、其方を観に行きます。…付き添いは居るんですか?」
名前「ドローンが彼の付き添い人だよ。私が必要な部分を操作する。ストップウォッチはヒロにやって貰う。」
船の外に一旦出るとキャルはケースを開けてドローンを飛ばした。
名前はヒロにストップウォッチを手渡して派遣先で使っただろ?と聞いたりしてその返事に談笑していた。
名前「シオン、合図を頼む」
ドローンを飛ばし調整しているのか、手元のモニターを見ながら話した名前は執事が嫌そうな顔をしたのを見逃した。
シオン「ready?」
嫌そうな顔をしてもやはり名前に忠実な執事は日本語を使わず英語でキャルに準備を促した。
シオン「Go」