第5章 投影
名前「ヒロ…」
ヒロ「………はい」
大きくため息をついて此方に向き直った名前は手を差し出した。
ヒロはその手に端末を乗せる。
受け取った名前は早々に中身をチェック
しながら後ろのフィルに背中を預けた。
彼は驚く事もなくただいつもそうしているかの様に名前の頭を優しく軽く撫でた。
僕とよく似た彼の肌色は白く、幼少期に差別を感じていた割にこういう所で差別的に彼を羨んでいる自分の心に面に出すなと釘を刺した。
読み終えたのか、名前は突然ヒロから受け取った端末を壊した。
ヒロは唖然としているが他のメンバーは何でも無いことの様だ。
如何やら此処ではそれは普通の事らしい。それどころか、
フィル「…ヒロ、今後任務へ出掛けた際、戻る時はどんな端末や電子機器も持って帰ってはなりません。」
キャル「そもそも、端末自体日本以外で持たないで欲しい。俺の動ける範囲も一応限界あるから。」
そう言い、汗を拭いながらメインルームに入って来たキャルは新しい端末を箱から取り出してヒロに渡した。
キャル「何処で誰が何を仕込んでるか、キミに判断出来るなら別だけど」
フィル「日本でも、それはあり得ますが流石に黒の組織に居たんですから気付くんじゃ無いんですか?…それより、キャル。シャワー浴びて来て下さい。」
フィルはキャルを睨むと大人しく従ってメインルームを出ていった。
俺とヒロはキャルがヒロに渡した端末を眺めた。特に何もない携帯にはその携帯の番号すら表示されない。
これではヒロとの通話手段は確保出来ないなと感じた。
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