第5章 投影
数十分後
沖矢「…なるほど…それでは、我々は秘密を知る数少ない人間の一部なんですね?」
名前「その通りだな。だがこれをまだ、コナン君には伝えないでくれ。…伝わるよりも前に、やっておきたい事があるんだ。」
沖矢「…わかりました。」
彼女の眼を見ればわかる。そう話す名前の眼は何処までも見えるかのような真っ直ぐな眼をしている。
降谷「…本当にヒロなんだな…」
ヒロ「ん?そうだよ?」
にこにこと笑う彼はスコッチでいた時のような
降谷「…ヒゲがない」
そう、髭がない。
ヒロ「それは司令がね、俺に下した最初の命令だから仕方無く…」
スコッチの事は俺も知っている為、小さな女の子の命令で髭を剃った彼の姿を想像して笑いが込み上げて来た。
それは降谷君も同じなようで楽しそうに笑っている。
ヒロ「そんなに笑うなよ、ところで其方は?」
降谷「赤井だ」
名前「ライだ」
沖矢「沖矢昴です」
ヒロ「……どれが正解?」
今度はこの船の乗組員がくっくと笑って肩を揺らしている。恐らく名前によって全部聞かされているのだろう。
名前は少し考える素振りを見せた後、降谷君の袖を引っ張り、乗組員から見えない位置でしゃがませると彼にキスをして耳を塞いだ。
納得がいかないが今は致し方がない。
早口で俺が誰で如何いう経緯で沖矢昴を名乗っているかを伝え、名前を抱き寄せて降谷君から引き剥がした。
身体を支えると、立ち上がった体制になった途端、名前に突き飛ばされた。
其れ程強く無い力だが身体は充分離れる。
名前はフィルと名乗った白衣の彼の所に向かって進み、顔が見えないように此方に背中を向けた。
一瞬、その医師に睨まれたが彼は名前に何もせずただ前に立たせているだけだった。