第1章 再演
服を着て医務室を出る。
キッチンに向かうと美味しそうな匂いが漂ってきた。
指示を出していた通り、彼が料理している様だ。
ドアを開けるとキャルとノアが居た。
席を立とうとする2人を制して気にするなというと特にキャルは脱力してその場にへたり込んだ。
キャル「もうすぐ出来上がるそうです。俺もう腹ぺこで。」
ノア「もう少し姿勢を戻してちゃんと座りなさい。」
「気にするな。好きにせてやれ。…不便をかけさせていないか?」
ノア「とんでもない。貴方があの時助けてくれて居なかったら私は此処に居ません。不便など」
「第一に、自分の身を案じろ。それは私の負担を減らせる事に繋がる事だ。」
ノアの腕を引き自分の顔を近付けた。
「…もう一度聞く、何か不便にさせている事は無いか?…」
彼女を真っ直ぐ見据えながら話すがノアは此方を見つめながら、ありませんと返した。
距離を戻し、キャルが入れてくれた珈琲に手を伸ばした。
「…キャル。」
キャル「なんですか?」
「これはお前が淹れたのか?」
キャル「そうですけど…」
「不味い。豆が勿体無い。2度と作るな」
キャル「ひっど!其処まで言わなくて良くない?!」
カップを置くとシオンが新しく淹れたものと交換してしまった。
別に飲まないつもりでは無かったが、シオンはその不味い珈琲を嬉しそうに飲んでいる。
“嬉しそう”の意味が分かる私は、そんなシオンを見ない事にして渡された珈琲の旨みを堪能した。
「キャル、シオンに珈琲の淹れ方を教われ」
キャル「え!やd
シオン「喜んでお教え致します」
シオンはキャルをギロリと睨むとその声を黙らせた。
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