第1章 再演
次に目が覚めたのは“本部”の医務室だった。
「お目覚めですか?眠り姫。」
目を向けると其処には白衣を着た彼が立っている。
「…フィル、彼は如何している?」
「起きて早々他人の事ですか?…彼は料理が上手な様なので貴方の命令通り、みなの食事を作らせていますよ。怪我もしていなくて良好です。」
呆れながら喋る割には饒舌だ。
そういう彼はこの本部にほぼ住まわせている
医療師、フィル・ホワイト
見た目は降谷零と瓜二つだが、彼の父親がオランダ人だったらしく肌の色は色白だ。
オランダでは80%以上が白人だが、この彼もまた違う意味でいじめを受けていたらしい。
医療の仕事を任せている時彼は茶色い髪をハーフアップに結えるようにしている。
横に丸長い眼鏡をかけながら此方に近付く。
「彼の料理、召し上がられては如何です?」
私の脈や瞳孔を確認しながら話すが
言ってる事とやってる事が釣り合っていない。
「…食べに行くから早く手を退けてくれ。」
「そうですね…ですが折角、貴方が目覚めたのでもう少し堪能させてください…」
医務室のベッドの上に腰掛けると私を抱き寄せて頭を撫でてくる。
撫でられる感覚もよく似ているんだが、それ以上に感じる事は特に無く、もういいか?と言うと寂しそうな顔をされた。
ベッドから立ち上がると自分が下を履いていない事に気づいた。
正確にはパンツは履いていて、ぶかぶかサイズのパーカーで、何とか見えないギリギリの位置なのだが。
「…おい、フィル。私の服はどうした?」
「シオンに着替えさせたら、そうなってましたね」
「シオン」
大声で呼べばずとも、普通の音量で呼べば何処からともなく現れるシオンは私の“執事”をしている。
「……」
既に手に持っていた服を手渡される。
察しがいい割に態となのかと問いたくなるが
その返事を聞くことも若干恐ろしく感じて口を注ぐんだ。
.