第1章 再演
明るかったその場所は蝋燭で照らされていた様に風が吹いて消え、
手の平から感じるその場所は元の
ざらつく地面の上だった。
そして、リュックを背負っている事に気付く。
身体を起こしながらフードを深く被り直す。
ワイヤーを射出させ、ワゴンと自分がぶつかるまで互いを引っ張り、ぶつかった地点にワゴンを丁度良い場所に置いた。
もう一度ワイヤーを屋根に伸ばし、身体が浮く。
2人の姿を視界に捉えるとリュックから必要な物を取り出して、まずは煙幕で辺りを見えなくした。
2人の間に着地後、トランプのカードをその2人に突き付ける。
彼等が受け取った事を確認すると座り込んでいる1人に囁いた。
「 悪いが、君の命は私が貰う
今この瞬間から勝手に死ぬ事は許さない 」
彼のシャツの内側にハンカチ程度の布と散弾銃の弾を仕込み、スカッシュのボールを脇に挟ませた。
2人に渡したカードを奪い取り、その場からワイヤーを上に伸ばした。
会話を聞きながら離れると、当然今起きた事を気にする2人だが、置かれている立場も現状も把握している為か、余り変化は感じられなかった。
屋上から様子を伺うと煙幕の晴れたその場所は例のワンシーンのようだ。
ーー結局、階段を登る足音で彼は死のうとする未来は変化しない。ーー
鉄の階段を登る音が聞こえる。
そして、鳴り響く銃声を聞いてそれを合図に私は下へ降りた。
用意しておいたワゴンの位置を確認すると下から爆薬を吊るしたトランプカードを打ち込んだ。
爆破後、彼の身体は落下しワゴンに入り込む。
そのワゴンを物陰に追いやって、代わりのワゴンをワイヤーで引っ張っり、それに火をつけ燃やした。
これで“彼は死んだ事にできる”
鉄の階段を降りてくる足音が聞こえる。
急いで“彼が入っているワゴン”に自分も入り込み、彼の唇が触れると同時にスタンガンを使い、自らを気絶させた。
目を開けると一室のベッドの上にいた。彼も一緒に。
「…少し、手間取った。」
「成功ですね。」
執事が力無く倒れそうな私の身体を支えてくれる。
「…診てやってくれ。」
それだけ告げると今度は“いつもの”胸の苦しみを感じた。その場に蹲ると執事が私の身体を抱き抱える。
「…後の事はお任せ下さい。苗字司令。」
その言葉を聞いて意識を手放した。
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