第1章 再演
「……良かったって思うんだけど、“もっと情報があれば”って思うよ。」
ノア「…司令は、“それ以上の情報は必要無かった”と言いました。」
「?どうして…」
ノア「私に言える事は司令は遥かに私達よりも多くの情報を読み取っています。
それが彼女のもつ“洞察力”です。」
自分の考えが、感情が、言葉にならない事で苗字さんの洞察力の凄さを感じた。
「苗字さんって何でそんな凄いの?」
ノア「…彼女には一定以上前の記憶がありません。なので、それ以前の事は誰も知りません。」
半分笑いながら理由を聞いたのに、ノアの言葉に緩んだ表情筋が元に戻った。
「…じゃぁ、彼女は…家族は…?」
ノア「…そもそも、彼女に家族は存在しません。…この世界の住人ではありませんので。」
今更揶揄われているのなら、ノアのそんな悲しそうな声を聞く事は無かっただろうと思う。
「…じゃぁ、なにか?1人でこの世界に来て、1人でタイムリープして、人を救える様に、組織を此処までにしたのか?…メインルームの機械も厨房もこの船も、彼女が用意したのか?」
ノア「落ち着いて下さい。…司令が情報を集めろと言うのは自分達のためです。司令は常に、誰かを頼る事を忘れてはいません。以前よりずっと、私達を頼っています。そしてその姿勢は私達だけでなく、貴方のよく知る人達も。」
.