第1章 再演
シオン「…ノア、ヒロの教育として其れ等を話してやれ。私はキャルとメインルームに戻り作業を始める。」
ノア「わかりました。」
シオンとキャルは厨房エリアを出てメインルームに入って行った。
キャルは厨房を出る直前、ティッシュを此方へ投げて来た。
訳が分からず受け取ったが、それに対してノアは軽く笑っていた。
ノアが、シオンが淹れた珈琲をカップに注いで
俺にも渡してくれる。
ノア「では、話しましょう。…ヒロ、貴方の前に自殺しようとしている少女がいます。
彼女には妹が居て、妹をとても大事に思っています。
妹が彼女を呼べば直ぐに駆けつけ、妹を抱きしめ安心させます。
妹が喧嘩をしたと聞かされれば妹を叱りますが、それには怒鳴ったり暴力を与えるものではありません。ただ、教える様に叱るのです。
妹は姉をとても慕いました。
ですが、姉はその妹の気持ちを知りません。
ある時、姉は学校で嫌がらせをされる様になります。嫌がらせは長く続きました。
覚えのない事まででっち上げられ、身に覚えの無い話を、話した事もない学生からされ、作られた動画を拡散された。
追い詰められた彼女は…ヒロ、
貴方の目の前で今にも飛び降り、その命を断とうとしています。
貴方は、どうやってそれを止めますか?」
「…情報が少ない。妹を呼べば、」
ノア「それでは妹を呼んでいる間に彼女は飛び降りるでしょう。」
「…全部、作られたもので、誰も君をそんな目で見ていないと話す…?」
シオン「誰かが彼女をそう追い込みたい程恨んでいるなら彼女は死を選ぶ。」
「………もっと、情報が欲しい。」
ノア「…司令は今の情報よりずっと少ない状況で阻止して見せたんですが、私は貴方の気持ちを察します。……妹を諭す様に叱るのは、叱り方が特有だからです。それは“説教”なんですよ。」
「……教会か?」
ノア「その通りです。…教会では赤ワインを配る事があります。
……司令はそれを彼女に手渡しました。側に座り、自分は動かないからと取りに来させましたが其処で保護などしませんでした。
彼女の話を聞き、ただ側に座り、ワインを飲んだ。
ただ、それだけなんです。
やがて少女は泣き崩れ、死を選ぶ事をやめました。」
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