第1章 再演
「髭を剃れ。」
キャルは吹き出してケラケラと笑っている。流石にシオンも拍子抜けだった様で顔を背けて肩を振るわせている。ノアは普通にしているが我慢している様にも見える。
××「……任務、だもんな…」
「そんなに嫌がるな。キミには此処の厨房を任せるんだ、そんな不衛生で居て貰っても困る。それに、髭を剃るだけで別人に見られるならまだマシだ。シオン程苦労はしない。」
シオン「羨ましい限りですね。」
××「…行ってくる…」
ゆっくり動き出す彼はやはり少し髭を名残惜しそうに触っていた。
「…キャル、髭ってそんなに好いなものか?」
キャル「うーん…前の職場の奴は自慢してた奴も羨ましいと言ったやつも居たね〜俺は分かんないけど。」
全く理解出来ない話だ。永久脱毛に連れて行かれないだけマシだと思え。必要であれば脱毛器を此処に揃えさせても構わん。
思っていた事が声に出して出ていたらしく、其れを聞いてしまったようで、戻ってきた彼はカミソリをカラカラと落として音を立てた。
「…そっちの方がかっこいいからそうしておけ。」
本音を面と向かって話すと今度は少し顔を赤くした。
××「あ、ありがとう…?」
シオン「それより、彼の呼び名はどうしますか?」
「ああ、今のままでは不便だからな。…ヒロと呼ぶか、ネームレスか、ノーネームと呼びたい所だな。」
キャル「ノアの時はどうやって決めたんです?」
「ノアは舟を唯一手に入れた人間だ。この船の実質的な所有はノアにしてある。公に出来ないから富豪の持ち物だけどな。 そこにパールという名前を足したんだが、その意味は白く何色にもなれるキュラソーに因んでホワイトと付けたかったが、」
キャル「それって、」
「ああ、フィルと被るからな。それにノアにはもう少し輝いて欲しいと思った。ホワイトよりも。だからノア・パールと名付けた。
……さて、キミはどうしようか。諸伏景光…ヒロ…スコッチ……」
キャル「……しれー?もしかして眠気また来ました?」
「あぁ、…またきた……取り敢えず全員、彼の事は本名で呼べ、他人を相手にする時は“ミツヒロ”と呼ぶように。…」
シオン「では普段は“ヒロ”、必要に応じて“ミツヒロ”と呼ぶ様に。フィルにも伝えておきます。……おやすみなさい。」
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