第5章 【5KP】1999
「もう…、紫耀〜!
そんな顔しないでって!苦笑」
「や、ちがっ…ほんと、ごめん。。」
お互いに言葉を探しても…見つからなくて。
そんな状況に耐えかねて沈黙を破ったのは海人。
「紫耀、踊らない?」
「…え?」
「踊ろうよ!一緒に。
世には出せないけどさ、。」
言葉にはできないけど、
伝えたい想いがある。
だけど、いくら想いがあったとしても
伝えちゃいけない言葉もあって…。
その想いをぶつけながら踊った
海人とのダンスは
アツくて、切なくて…
情熱的なのに、
どこか、クールで。
あぁ、あれだ。
冷静と情熱のあいだ。
冷静と情熱の狭間で
俺たちは揺れていたんだ…。
***
「ねぇ、オレらヤバくない?!
紫耀と踊んの、やっぱトクベツだわ…!」
「わかる。。海人とのしっくり感ヤバいよね…」
「…オレねぇ、踊ってるとき紫耀と『楽しいね』
って感じで目が合うの、好きなんだぁ。」
ふふって優しく微笑む海人と目が合うから
こみ上げてくるものがある、。
事務所に入ってきたばっかの頃、舞台袖で
『…怖いよ』って声を震わせてる海人を見て
守りたいって思った。
飲み屋で絡まれたときも
すぐに落ち込んで泣いてる海人を見たときも
俺が海人の盾にならなきゃって。
『紫耀はオレのヒーローだから!』
屈託のない笑顔で俺についてくるお前にとって
カッコいい存在であり続けたかった。
俺に憧れて、高校卒業と同時に俺と同じ場所に
ピアスを開けてきたお前のこと
観葉植物に『しょうくん』って名前を付けて
育て始めた海人のこと、心底かわいいと思った。
「お前は…最高の弟だったよ。
でも、もう、、海人は弟なんかじゃなくて。
お前が選んだ人生を、自分の責任で
自分の足でしっかり歩いてる
一人の立派なオトコなんだよな…」
そんな紫耀の言葉に素直な気持ちを返す。
「オレのヒーローは紫耀だよ。
今までもこれからも、ずっと。」
……多分、それは本当で。
思ってないことは言わない
海人のその気持ちは信じられる。
けど…
結局、お前が選んだのは
キンプリの名前を残して
廉とティアラと…
『キミと幸せに』を願う人生で―――…。