第5章 【5KP】1999
「あなた達は確かに、スキルも高い。
その上、ビジュアルの良さも抜きん出ている。
だからこそ、沢山のファンの方が
あなた達に夢をみることができるの。
でもその選択肢の多さゆえに…
きっと、あなたは悩んできたんだろうと察します。
だけど、本当に今のまま
グループを続ける道はないんですか…?
現状を維持して、今のままグループ活動もしながら
演技仕事や求められるバラエティーを続けていけば、
確実に売れ続けていける。
若いころとはカタチは変わるけれど、
年を重ねればまた違った魅力に出逢えますし、
あなた達はそれができるグループだと信じてます。
それに対して、
売れる保証もない活動を容認することは…
アイドル事務所の社長として、できません。」
その言葉に
水を打ったように静まり返った室内。
仕方ないよな。
メンバーからも社長からも
できないって言われたら。。
「それで…その考えは5人一致してるの?
さっきから一言も発してない3人の考えを
聞かせてもらえるかしら。」
岸「僕も…神宮寺と、平野と同じ考えです。」
手を自分の顔の上でいったりきたりさせながら
落ち着きなく話す岸くん。
リーダーなのに、こういうかしこまった場が
誰よりも苦手な岸くんらしいよな、なんて…。
「…わかりました。あなたは?」
永瀬「…僕は、まだ見ぬファンより、
いま、応援してくれとるファンを大切にしたくて。
そのコら置いてけぼりにして、
大きな路線変更もしたくはないですし、
海外には行きたくないのが本音です。
でも、別にそれは…
海外に挑戦せんってことやなくて。
今は配信もありますし、今の活動を続けた結果、
ファンの輪が海外まで広がったなら
そういう未来があってもいい…とは思います。
けど、海外ありきでは僕は考えられんくて。
それは僕はしたくないです。」
そんな廉の言葉に
社長は今日初めてホッとしたような表情を浮かべて。
「私と似た考えのメンバーがいてくれて
少しだけ、安心しました。
最後になっちゃって申し訳ないけど…あなたは?」
自分の考えを整理して人に話すのが
人より時間がかかるオレは
いつも、意見を求められるときは最後で。
今までは考えをまとめる時間が4人分あったけど
これからは違うんだ…なんてことが頭をよぎる。