第1章 【れんかい】僕だけは知りえないキミ。
むかしから表現することが好きだったオレと違って
廉はそういうことが得意ではなかったし、
そもそも人前に出ること自体好きじゃなかったって
前に教えてくれた廉。
そんな廉にはこの仕事を続けていくうえで
オレには話せない気持ちとかも
きっと、あるだろうし。
アイドルからただの男の子に戻れる
むかしからの友だちとだけ過ごす時間は、
廉にとってかけがえのない必要な時間だって…
オレもそれがわかっているから
廉の友だちに感謝しているのは本当の気持ち。
どんなに熱望してもオレは
その時間を過ごしている廉には逢えない。
たとえ、廉と共通の友人ができたとしても
そこにオレが入った時点で
仕事のことをゼロになんてできるわけないんだから。
だからオレは、仕事のことをぬきにして
ただの男の子に戻ってる廉には絶対に逢えない。
これから先何十年と一緒に居たとしても
オレだけは一生知りえない廉だ。
「……おーーい、海人さんちょっと長ない?笑
寝てませんか~?w」
「寝てませーん!笑」
オレは包み込んでた廉の左手をおでこにあてて
心の中で誓いをたてる。
『僕は…これから先ずっと、
廉の最高の仕事仲間であり続ける努力をします。
廉のこと、
仕事でもプライベートでも一生大切にします。
だけど、廉の友だち様。
ただの男の子の廉のことは
どうかよろしくお願いします。
何卒、です。』
ゆっくりと目を開けると
廉がオレの方を見て優しく微笑んでいた。