第1章 【れんかい】僕だけは知りえないキミ。
「で、ゲームの話したかったん?」
「違う違う。笑
昨日のブログのこと。」
「昨日、昨日なぁ……。」
と呟きながら廉がリビングのドアに左手をかけたから
空いていた右手を掴んで少しだけ引き寄せた。
「……こっちの手?」
「うわっ! 急にどした?笑」
「友達が握ってた手って…こっちの手?」
「うわ…ダルっ!!笑 ダルいダルい!!w
海人それはダルいって!笑」
「ダルくない。ダルくないでしょ?」
「ごめんなさい、ほんま申し訳ないけど
ダルいですwww」
そんな廉に構わずぶつぶつと推理し始める。
「あ、でも廉左ききだからご飯食べるときとか
いつも左に座るよね?
ってことはやっぱ、握られたのは右手でしょ…?」
「知らん知らん!笑 そんなん知らんて(笑)」
「もーー!! 真剣に思い出して!」
「そんなん知らんけどさ、
気になるんやったら両方握っとけばええやん?」
なんて……
上から涼しげにオレの好きな顔で見下ろしてくる
この永瀬廉ってオトコには本当に困る。
「……んーー! もーーー!!
じゃあ、そうする!!!」
「そうするんや(笑) 別にええけど…w」
***
「で、海人さん……気、済んだ?笑」
「済んでない!」
「うっそ! マジで!?w まだ済んでないん?笑
もう1分くらい握ってんで笑」
「……全然済んでないし、
なんならまだ左手握れてないし…!」
「笑 …なんか知らんけど、まだまだ
かかりそうやからとりあえず部屋入って、座ろかw」
先に座った廉の隣に
廉の方をがっつり向いて正座する。
「…ふはっ! マジか笑」
「マジです。はい! 左手かして。」
「……海人さん、マジらしいわ笑」
オレの真剣な表情に観念したらしい廉は
おとなしく左手を差し出してきて、
差し出された手を両手で包みこんで瞳を閉じる。
もしかしなくても
これは多分、一種のヤキモチなんだけど…。
でも、ヤキモチだけど
嫌だとかそういう気持ちではなくて。
むしろ廉の友だちには
すごく感謝していたりする。
だって、オレには
一生かかってもできないことだから―――…。