第2章 【きしれんかい】エンドロール
『それより廉、いま楽屋?』
「うん。なんで?」
『海人も…一緒?』
「うん、もちろん。変わる?」
きっさんにそう尋ねたあと辺りを見回すと、
さっきまでいたはずの海人がいないことに気付く。
「……あれ? おかしいなぁ。
さっきまでおったんやけど。」
『……廉。そういうとこだぞ。』
「え? なにが??」
『いや、まぁ…一緒にいるかもしれない時間にかけた
俺も悪かったけど…。』
「や、でもオレ、電話出る前海人に断ったで?」
『いや、まぁ…。うーーん…。
でも、海人はヤキモチ焼きだからさ…。
もうちょい、気にかけてあげな?』
「は?笑 なんでここで急にそんな話…苦笑」
『いや、まぁまぁまぁ……ね?
多少あるでしょ、そういうのは!!』
「そんなん知らんし…苦笑」
ていうか、それ言い出すんやったらさ
きっさんこそオレのことそういう意味で……
気にかけてくれたこと、あんの…?
そう喉元まで出かけた言葉を飲み込んだ。
「きっさんはさ……大丈夫なん?」
『ん…? 大丈夫、大丈ー夫! 大丈夫よ。
ありがとう。廉も…大丈夫?』
「……大丈夫よ、ありがと。
大丈夫やけど……、」
必死に我慢していた声が震えだす―――…。
「きっさん、これからもまた電話……
ときどきしても…い?」
『……んだよー。泣くなよ廉…。』
隣に居られない距離が……もどかしかった。
いつもやったら手を握ってくれて
ハグしてくれて…
きっさんの匂いに包まれるだけで
安心できとるハズなのに。
“なんで…
なんできっさんはいま、隣におらんの…?”
その言葉だけを伝えたいのに
その言葉だけは伝えられなくて
唇を噛み締める…。
『いいに決まってるじゃん!
バカなこと言うなって、廉…。
俺たち今までも、これからも
ずっと…、友だちだろ?』
「……ありがと…。」
『遠慮しないでいつでも連絡していいから!
前みたいにさ笑
で、落ち着いたらメシでも行こうよ!
海人がよければ海人も一緒に…。』
「ん、言っとく。言っとくけど、
オレとのときみたいにドタキャンはあかんよ?
海人、そういうの気にするから…。」
『わかってるわかってる、気をつけるって!
けど廉、海人のこと…よくわかってるんだな。
なんか……安心したわ。』
「ん…まぁね。」