第16章 商売をするなら……
「とはいえ、それですとこいつらに対して処罰があまりにも甘すぎますので、私が認めるまではここで無償で働かせます。
私の指導に基づき、最終試験に合格した暁には解放を。不合格ならば合格するまで働かせます。
本当に自らの行いを悔いていると言うならば、やるよな?」
私の言葉に、イソギンチャク生達は全員頷き、キラキラした目で私を見つめた。
別にあんた達の為にやったんじゃないんだけどね、サバナモブをどうにかしてあげたかっただけだし。
それにいくら自業自得とはいえ、悪質な環境下の元で働かされるっていうのは理不尽にもほどがある。
ブラック企業に勤めていたからこそ、見過ごせないんだよね。
「如何でしょうか、アズール先輩にとってはかなり良い条件かと思うのですが。
有能な従業員になれば正式に雇うこともできますし、今以上に効率よくなるかと思います」
「……いいでしょう、手を打ちましょう!」
「良かったです、では契約書を作成していただけますか? アズール先輩のお役に立てるよう、粉骨砕身働きますので今後ともよろしくお願いいたしますね」
にこりと笑顔を見せれば、何故か顔を赤くして目をそらされた。
そんなに怖い顔してた? というか料理とドリンクはもう来ないものと思った方がいいわけ?
「姉貴! これ俺が作ったんすけど食べてください!」
「こっちは僕がドリンクを作りました!」
「うん、上達してるじゃん。成長したね、偉いよ」
その日から、イソギンチャク生達の指導を行う事になった。
最初は見ていられないほどに酷かったイソギンチャク生達だったが、みるみるうちに上達していった。
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか」
「お客様、宜しければこちらをお使いくださいませ」
「本日はこちらのセットがおすすめとなっております、是非この機会にご賞味くださいませ」
言葉遣いから、所作まで最初の頃とは見違える程に良くなった。
今では、自ら率先して働きたいと申し出る者まで現れ、アズールはかなり驚いていた。
私はというと、相変わらず指導する日々を続けていた。
今では既存のオクタヴィネル寮生にまで指導をする事になり、全体的に良い感じに変わってきているように思う。