第15章 いくらなんでもさ……
これはまた目立ってしまうとは思ったが、今は片付けるのが先だ。
グラスを落としたイソギンチャク生に箒、ちりとり、モップがどこにあるのかを聞き、一緒に取りに行く。
完全に怯えきっているイソギンチャク生の胸ぐらを軽く掴み、耳元で言った。
「怯えてたってグラスは元に戻らねえよ。
まずはきちんと謝罪をしてから、その後どうするのかを言って対応するのが基本だろうが。しっかりしろ」
素早くグラスを片付け、モップで零れたドリンクを綺麗にする。
「お客様、先ほどは大変失礼いたしました。お怪我などされていませんでしょうか?」
念の為近くにいた客に怪我が無いかを聞いて回り、入れ直したドリンクを運ぶように指示する。
「一気に運ぼうとするな、運ぶならこの並び順にしてからにしろ。平等に力が分散されて運びやすくなるから……ほら、持ってみろ」
「あ……さっきよりも運びやすい!」
「テーブル順に置いてあるから、手前・奥の順番に置いていけ。そうすれば安定した重さのまま運べるから。
運んだ時は、さっきの謝罪をしろ。ちゃんとした言葉遣いで言わなきゃ逆効果になるから気をつけろよ」
そうイソギンチャク生に教えてやり、私は自分の席に戻ろうとした……が、またあるイソギンチャク生が目に付いてしまい、身体が勝手にそちらへと向かってしまう。
「おい、なんだその作り方は。客に食わせるものじゃないだろこれ。先に下に敷いてから置くんだよ、ほらこうやって」
「綺麗……!」
「これだと運んだ時に転がり落ちるだろ、運ぶやつの気持ちも考えながら作ってやれ」
気が付けば、次々と気になるイソギンチャク生達に対して口出しをしてしまい、いつの間にかイソギンチャク生達から指示を出して欲しいと泣きつかれるようになってしまった。
私は一応客なんだけど。