第15章 いくらなんでもさ……
放課後になり、私はモストロ・ラウンジへと向かっていた。
正直入る前からかなり嫌な予感がしているが、決めたからには腹を括るしかない。
そう思い、ドアに手をかけ中に入るとそこには想像通りの酷い光景が目に入ってきた。
賑わう店内、慣れない手つきとおぼつかない足取りで必死に料理を運ぶイソギンチャク生達、指導と呼んでいいのかと思うほどに、手荒い方法で教えているジェイドさんとフロイド、どこで油を売っているのかこの惨劇を見ていないアズール。
ふつふつと怒りが沸くのを感じながらも、案内された席に座り、料理とドリンクを注文する。
その混み具合だと、料理は10分以上はかかるだろうが、ドリンクならば3分もあれば持ってこれるだろう……そう考えていたのだが。
15分待っても、料理はおろかドリンクさえも来ない。
いい加減声をかけようかと立ち上がった時、明らかに自分のキャパを超えた量のドリンクを運ぼうとするイソギンチャク生が見えた。
今にも床にぶちまけてしまいそうなくらいに、ふらふらとした足取り。
これは絶対に落とすだろうと思った矢先、遂にイソギンチャク生がバランスを崩して倒れた。
けたたましい音とともに、飛び散るガラスの破片とドリンク。
先程まで賑わっていた店内が、一気に静まり返る。
その原因を作った本人は、混乱しているのかオロオロとその場で立ち尽くしている。
「大変失礼いたしました、すぐに片付けますのでご安心ください」
気が付いた時には、イソギンチャク生の頭をぐっと掴んで下げさせ、そう言葉を発していた。
静まり返った店内に、私の声が響き渡った。
いくらなんでもこれは見逃せないわ。
社畜歴がここで役に立つとは皮肉ではあるけど。
仕事をなめんなよ?