第14章 頭のいい子は好きだけど……
「何のことかは存じ上げませんが、私はただ友人のテスト勉強を手伝っただけですよ?
ジェイド先輩にも言いましたよね、貴方達の”邪魔”になるような事はしない、あくまでも”私と深く関わりのある人”だけに教えていると」
「……いつから、気が付いていたんですか?」
「先程から何の話をされているのでしょう? 分からない事は答えようがないのですが」
「……契約の件についてです」
流石、頭の回転は速い。
相手がどこまで把握しているのかを探るために、敢えて具体的な事を言わない話術。
あくまでも、どこまで知っているのかと聞いただけで、この内容についてとは言っていない。
完全に相手を手のひらの上で転がし、確実に情報を聞き出せる方法だ。
ただ、自分よりも頭の回転が速く、且つ敵わない相手ならば話は前に進まなくなる。
何故なら、しらを切って「何の話ですか?」と言われればそれまで。
相手から話す事はないし、こちらが話を切り出さない限り相手も話そうとはしないだろう。
どうやら彼は、私を敵わない相手と認めたようだ。その方が私も早く話を切り上げられる。
「最初に気が付いたのは、ジェイド先輩とフロイド先輩が、他の生徒に声をかけているのを見かけたときです。
会話の内容までは聞いていませんが、時期と声をかけている生徒の特徴から察するに、テスト関連だろうと思っていました。
極めつけは、アズール先輩に頼まれて私に接触してきた時です。飛行術の授業以来、これといって接触をしていなかったと言うのに、突然声をかけて来られたのでそこで確信しました」
淡々とした様子で応える私に対し、三人は目を見開き、完全に黙り込んでしまった。
畳み掛けるようにして、私は言葉を続けた。
「困り事があった際には”何時でも手助けする”と申し上げていましたよね?
その必要はなかったと安心していたのですが、どうやら私の友人にテスト勉強を教えるということ自体が、御三方の邪魔になっていたようですね。
しかしそうならば、声をかけるタイミングはいくらでもあったのではないですか?
私を監視する時間はあったようですので」
バレていないと思っていたのか、分かりやすく反応をする三人。
フロイドの手が緩くなったのを見計らい、私はサッと立ち上がった。