第9章 イデア氏とヴィルさんは……
「兄さん、記子さんが書類を届けに来てくれたよ!」
「初めまして、記子と申します。学園長から書類を預かりましたので、お持ちいたしました」
暫くの沈黙の後、ゆっくりと部屋のドアが開かれて、イデアさんが顔を出した。
「……どうも」
「髪、綺麗ですね。淡くて優しい色……」
「へ、へ?」
「あ。急にすみません。凄く綺麗なんだなと思ってつい」
そう言ったら、ぼそぼそと話してくれた。
こういう書類って電子化すればいいのにって言ったら、さっきまでとは一変してめちゃくちゃ共感されてマシンガントークされた。
「あ……部屋、散らかってるけど、入る?」
「え、いいんですか? じゃあお邪魔にならない程度に少しだけ」
少しだけ打ち解けられたみたいで安心したわ。
全く話せないよりは、少し話せるほうが楽しいからね。
「わぁ……これもしかしてホラゲーですか? 面白そう!」
「もしかして、ホラゲオタク……?」
「ゲーム全般好きなんですけど、ホラゲは格別級に好きなんですよ! スマホに入ってるかな……」
スマホを見てみたら、某脱出ホラーゲームが健在。
やったねでもこれこっちの世界ではプレイできないんだろうな。
「これはどういう系?」
「脱出ホラーです。難易度は結構高めなんですけど、ストーリー・グラフィック共にクオリティが高くて神ゲーとも呼ばれていました」
「そういう系のジャンルが好きなら、こういうのもあるけど……やる?」
「え、やりたいです! でもいいんですか?」
「ホラーオタクと聞けば、布教するまででござる」
「嬉しいです! ありがとうございます!」
その後試しにスマホゲームを起動してみたけど、回線エラーでプレイできなかった。
しょんぼりしてたら、こっちの回線で繋げられないか調べてくれるってイデアさんが言ってくれて、この人は私の神様かなと思ったよ。
「生まれてきてくれて本当にありがとうございますイデア先輩」
「……え?」