第6章 腹減ってタルト食ったら首はねられた?
私の言葉にリドルさんは、はっとした表情に変わる。
ようやく気が付いてくれたようだ。
「食後の紅茶は必ず角砂糖を2つ入れたレモンティーでなければならない、なんでもない日のパーティのティーポットの中には眠りネズミがはいっていなければいけない、火曜日にハンバーグを食べるべからず、水曜日に庭の花を摘んではならない……これら全ては、何故そうしないといけないのですか?」
「っ……」
「法律というのは、こうしなければこうなるから、というきちんとした理由がなければ成り立たないんです。
例えば、午後10時以降は外出してはならないという法律があったとします。
その理由として、夜は野犬や危険な生物が外をうろついていて、命の危険がある。
また、見通しが悪く、外にいる者も少ないことから、万が一の時すぐに助けられない為。というものだったとします。
この理由であれば、命知らずでない限り皆納得して守るでしょうし、守らず襲われたとしても、完全なる自業自得です。
では、ハーツラビュル寮の法律の中に、一体いくつ理由の明白になっているものがあるでしょうか。
リドル先輩も、既に気付かれていたのではないですか? 誰よりも厳格で、賢明な判断ができる方なのですから」
私が言い終わると同時に、リドルさんはその場に泣き崩れ、しがみついてきた。よしよしと、あやすように抱き締める。
「今まで辛かったでしょう、もう理不尽な法律
は守らなくていいんです。
貴方の周りにいるのは、トランプ兵でも頭のおかしな帽子屋でもない、人なんですから。
きちんと話せば、法律を厳守せずともまとまります。リドル先輩なら尚更です。
貴方にだから、ついて行きたいと言う方が多くいらっしゃると思います。もっと周りの人に目を向けて見てください」
そうリドルさんに声をかけると、泣きながらも力強く頷いた。
きっともう大丈夫だろう。
私は立ち上がり、エースに向き直った。