第6章 腹減ってタルト食ったら首はねられた?
私の言葉に、リドルさんは目を見開いて私を見る。
まさか私にそう言われるなんて思っていなかったんだろう。
でもね、従わせたいなら従いたくなるような姿勢を見せる必要だってあるんだよ。
「何.....だって?」
「リドル先輩の指導では改善されないと申しました」
その瞬間、リドルさんは私にマジカルペンを向けてきた。
素早く彼の後ろに回り、ペンをはたき落とす。
「話は最後まで聞くものですよ。そんな初歩的なことも教わらなかったんですか?」
「なっ……!」
「少し冷静に話をしましょうか。口の減らないガキに自由はない……罰の時間(タイム・トゥ・パニッシュメント)」
出現した扉を開けると、怯えた表情のリドルさんとエースがいた。
私は彼らを見下ろし、静かに話を続ける。
「ここなら落ち着いて話ができるでしょう。
さて、今回の問題ですが、エースは確かに悪いことをしました。
許可なくタルトを食べたのですからこれは言うまでもなく、悪いことです。
ではエース、タルトには何か書かれていた?」
「いや、置いてあっただけ.....パーティー用のタルトだったって知らなかったし、三ホールもあったから一欠片くらいいいだろうと思って」
「聞き直るな確認しなかったお前が悪い。
ですが、これがパーティー用の大切なものであると、事前に伝えていなかったリドル先輩にも非はあります。
エースのように、考えなしに行動する生徒がいる可能性を想定し、対策を取るべきでした。何より……貴方は自分を過信しすぎている」
私の言葉にリドルさんは、ばっと顔を上げて叫んだ。
「僕は……誰よりも正しいんだ! 今までだって法律を厳守してきた! 正しい僕に逆らおうとするやつが間違っているんだ!」
悪夢を見たからか、ガタガタと震えながらそう言うリドルさんに、私はしがみこんで言った。
「では質問です。ハーツラビュル察ではなんでもない日を祝うパーティーがあると聞きましたが、その日は”マロンタルトを出してはいけない”という決まりがあるそうですね。
何故マロンタルトは相応しくないのですか?」
「それは、法律で!」
「私が聞いているのは、”相応しくないとされる理由”です。相応の理由なしに、法律は作られませんよね?」