第11章 ミッドナイト 「好きな料理」
今日の晩御飯が終わったら私は皆に会えなくなる。
晩御飯を食べ終わって出てきたレーサー様とホットアイ様には先に今までのお礼を言っておく。
そして後からブレイン様が出てきた。
「じゃあ、しっかり」
キッチンからいつも通りに出ていく。
「今日のご飯は美味しかったですか?」
食器を片付けながら聞くとエンジェル様が笑う。
「ああ!私とコブラの好物を作ったんだな!美味しかったゾ!!」
嬉しそうに笑うエンジェル様に手が震え始める。
コブラ様が私を見つめてきた。
「……お前」
そう言えばコブラ様は人の心の声まで聞くんだ。
…ならコブラ様。何も言わずに私の演技にのってください。じゃないと私も辛いから。
「………最近疲れてんだろ?」
ははっ、と笑って背中を叩かれる。
ありがとう、と思いながら3人にお菓子を出す。
エンジェル様は早速お菓子に手をつける。
ミッドナイト様も少しお菓子をかじってから目をつぶってしまった。
コブラ様は私の方をチラチラと見ている。
「あの、皆さん。言わなきゃいけない事があって。……明日ここから出ていくんです。……も、もっと良い仕事場が見つかって…」
ずっと考えていた言い訳を口に出すとあまりに身勝手で泣きそうになる。
ミッドナイト様は目を開いてエンジェル様も手を止めてこっちを見た。
「…っ。だから、明日から行くんです。こ、ここより皆優しそうで、……それで」
「もう良い。聞きたくない」
エンジェル様は手をつけていたお菓子を皿に置いて出ていってしまった。
「俺もー…。聞きたくなかったかな」
苦笑いをしながら出ていくコブラ様。
涙を堪えているとミッドナイト様も立ち上がる。
「……じゃあ」
皆居なくなってしまって部屋は静まり返る。
いつもならワイワイと騒がしい時間なのに。
付けていたエプロンで必死に涙を拭くけどそれもで止まらなくて声を押し殺して泣いた。