第1章 ナツ 「あの宝石」
口を開いたのはナツだった。
「ごめんっ...、カナタ!俺があの時守ってやれてたらこんな事なってなかったのに...!」
震える声を抑えながら話している。
「...ううん。ナツがウェンディ達を呼んでくれたから助かったんだよ?謝ることなんか何もないよ。それにナツが私を運んでくれたんでしょ?」
私がそう言うとコクッと頷いた。そして頷いたまま顔をあげなくなってしまった。
私はベッドの端の方に移動して壁に背を預けた。そのまま空けたスペースをポンポンと軽く手で叩く。
「ナツ。私はナツに何も無くて良かったと思ってる」
「うん...」
ナツは鼻をすすりながら頷く。
「それと一緒でさ。あの時は...怖かったけど結果的に私怪我してないの!ほら、ピンピンじゃない?」
笑って身体をねじったりしてみるとナツは私が叩いたスペースに腰掛ける。そんなに広いベッドじゃなかったから結構狭くなってしまった。
落ち込んだナツの手を握るとナツは私の両足を跨いで抱きついてきた。
「え...?ナツ?」
無言で頭を私のお腹に擦りつけてくる。震える手で私の服をギュッと強く握るのが分かった
「...でも、俺はお前に怖い思いさせた...!俺も、怖かった!カナタがいなくなったらどうしようって...」
顔が見えないけど泣いているのがわかる。
ゆっくりと髪の毛をすくように頭を撫でてあげると落ち着いてきたのかその手を掴んできた。
「俺はもう絶対お前に怖い思いはさせない。」
そう言って強く手を握られる。
「ナツ...。へへ、ありがとう」
そう笑うとナツもフっと笑って顔を近づけてきた。
「...は?へっ?ちょっと待って!」
私の声を聞いていないかのようにナツは私に優しく口付けをした
「んっ...!」
私の顔を見てからもう一度キスをする
「んんっ...。ナツ!何してんの...!!」
真っ赤になった顔を隠そうとしても腕がナツに掴まれているから隠せない。
「お前がいなくなるって考えただけで今までにないくらい怖くなった。...から生きてるかの確認!」
真剣な顔で言われるけどすごい失礼な気がしないでもない。
「キスとか付き合ってる人がするやつだし!最低!」
ベーッと舌を出してナツを押し退けてから部屋を出た。