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短編 フェアリーテイル

第9章 ローグ 「一輪のジニア」


「大丈夫ですよ」


背中を叩くとローグさんが息を飲んだ。


「お前……。やっぱりカナタだろ」


「へ?」


当たり前の事を言われて首を傾げる。するとローグさんは私の服を後ろに引っ張った。

急いで私は肩を隠す。


「今隠した所に061という紋章が入っている。お前はカナタだ。俺と昔いたカナタだ」


見られてしまった。
いつ付けられたのか分からない奴隷の紋章が見られてしまったようだ。最悪。
確かに彼の言う事は私に当てはまる、が


「…そんなの、信じられません」


するとローグさんは顔を歪める。


「そうか。しかし、俺は覚えている。俺はあのカナタだと思いたい」


「私は私なんです!」


そう叫ぶとローグさんは言葉を詰まらせた。

私はローグさんを困らせたことやローグさんが私を見てくれないことに腹が立って走って逃げた。



それから半年、私はローグさんと顔を合わせても話さなかった。

今日は1人でクエストに出かけた。


あと一人連れてきたら良かった。…後悔してももう遅いけど。

今私は負けて囚われてしまっている。


近くに人がいて常に警戒して睨んでいると1人の男の人に髪を強く引っ張られた。

そして口に何か変な薬を入れられる。

飲んじゃダメだ。

そう思って飲み込まずにいると彼らに無理やり口を開けさせられて水が入ったボトルの口を加えさせられた。

水を飲まないと鼻も塞がれる。
息ができなくて私は水と共に薬を飲んでしまった。


意識が無くなったと思うと、どうやら私は知らない女性の記憶を見ているようだ。

料理をしていた少女が男たちに捕まえられてどこかへ連れていかれる。

少女は涙を流しながら叫んでいる。


『ローグ!ローグ、助けて…!!』


…ローグ?なんでローグさん?

少女が連れられた後、少年があの家に入ってきた。


『カナタ?…どこだ?』


…これはあのカナタさんの記憶だ。

幾ら探しても見つからなかったのか外も探している少年は片目を隠している

私の知ってるローグさんだ。


『カナタ?…カナタ!!』


どこにもいない彼女の名前を呼んでいる。

少しして膝から崩れ落ちたローグさんは飾っていたジニアを花瓶ごと投げつけた。


「アイツも…、俺を置いていった…!!」
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