第9章 ローグ 「一輪のジニア」
何分か歩いて分かったけどローグさん脚が長い。
もちろん分かってはいたんだけど歩くのが早くてなかなか追いつけない。
走って追いつくがまた置いていかれるから走る。繰り返しているとローグさんが急に止まった。
「わぶっ、…どうしたんですか?」
背中にぶつかってしまって謝りながら聞くとローグさんはこっちを振り返って
「…歩くスピードが早かったか。今度はゆっくり歩く」
と謝ってくる。
驚いて私は首をぶんぶん横に振った。
「いやいや、私の脚が短いだけです!それにしてもローグさんってほんとスタイルが良いんですよね…!」
ローグさんを見て微笑むと彼は少し固まる。
そして口元を抑えてから後ろを向いてしまった。
「そ、うか…?そんな事はない」
照れてる!?
ちょっとからかってみようと思った時、
「カナタもスタイルは良い。それに、お前は顔が良いだろ。オルガやドーベンガルもお前の顔を初めて見た時照れていた」
と言われる。
思考が停止して体温が異常なほど上がる。
「え、へへ。ありがとう…ございます……」
消えそうな声でそう言って2人で顔を真っ赤にしてしまう。
少ししてローグさんがこっちに声をかけた。
「大丈夫か?…じゃあ、行こう」
大丈夫と答えると頷いてから歩き出すローグさん。今度は凄くゆっくり歩いてくれる。
嬉しくて微笑むとローグさんもこっちを見てから前を向いて少し笑った。
言われたところに着いた。
そこには色とりどりのジニアが咲き誇っていた。
特別あの花が好きな私には嬉しすぎる。
「凄いです!こんなところ知らなかったー!」
テンションが上がっていつもの私じゃないくらいはしゃいでしまう。
ローグさんに見つめられて気がついて慌てる。慌てすぎてピシッと気をつけをしてしまった。
「っ…、な、にしてるんだ」
ふっ、と笑いを堪えながら肩を震わすローグさんを恥ずかしくて少し睨むともっと笑った。
「なんだその顔。ほんと…」
そう言ってからローグさんは少し悲しそうな顔になってしまった。
あれ、私なにかしちゃったかな。
「俺はこれだからこの花が嫌いだ」
そう呟いてからローグさんは聞いてくる。
「俺の昔話を聞いてくれるか?」