第9章 ローグ 「一輪のジニア」
それから4人で(ローグさんは全然話さなかったけど)話して1時間くらいたった頃、スティングさんが時計を見る。
「もうこんな時間か。ギルド関係の話があるから行ってくるな?」
そう言って立ち上がる。
私が頭を下げるとスティングさんは笑って私の肩に手を置いた。
「お前、面白いんだからそんな気使うな。また話そうな」
そう言って歩いていったスティングさんに感激する。
私なんかにこんな声掛けて行ってくれて…。
「私も、実はこの後ミラ様とルーシィ様とお茶をしに行くんです。失礼しますね」
ニコッと笑って席を立つユキノさん。
え、待って…。2人っきりになっちゃう。
ついユキノさんの手を引っ張ると彼女は少し考えてからふふっと口元に手を当てて笑った。
そして私の耳に口をちかづけ、
「ローグ様は優しい人ですから、大丈夫です」
と囁いて行った。
いや、優しいんだろうけど。
そして2人っきりになる。
私はいてもたっても居られなくなって立ち上がった。
すると今さっきまで遠くを見ていたローグさんの目が私を追ってきて少し寂しそうに視線を落とした。
ぐっ…。なんでこんな悲しそうな顔するんだ。
「…あの、ローグさんはこの後予定とかは…?」
「ない」
即答される。
「…ローグさんが良ければ散歩でも行きますか……?」
恐る恐るそう尋ねるとコクッと頷かれる。
…可愛い
「…ふふ、じゃあ行きましょうか」
微笑んでそう言うとローグさんは立ち上がって私の横に並んで着いてくる。
「…?何か面白かったか?」
「いや、全然。何も無いです」
焦って淡々と答えると
「そうか。…そうか」
何故か2回呟いている。
それにしてもどこに行こうかな。
何も考えないで聞いちゃった。どうしよう。
ギルドから出て右を見て、左を見て、前を見る。
「どこ行きます?」
聞いてみるとローグさんも考えてくれる。
「…そうだな。カナタは花は好きか?」
「はい!好きです」
つい、大きく返事してしまって手で口を塞ぐ。
ローグさんも目を見開いた。
…恥ずかしい。
そう思って下を向くとローグさんはフッと笑った。
「好きか。良かった。なら、すぐ近くに花が綺麗に咲いているところがあるからそこへ行こう」
そう言って歩き出した。