第9章 ローグ 「一輪のジニア」
焦っているとローグさんは首を傾げる。
「怪我は無い」
そう言った彼に安心して一息つくとユキノさんの声が聞こえた。
「カナタ様!…あ、ローグ様もこちらへ!」
呼ばれちゃった…。
ローグさんは私の顔を見てから
「お前がカナタか」
と少し嬉しそうに言った。
ん?嬉しそう?なんでだろ。
「行こう」
そう言ってローグさんは歩き出す。私も小走りでその後を追った。
「カナタ様、こちらはマスターのスティング様とローグ様です。皆様、こちらはカナタ様です」
スティングさんが軽く手を挙げるので私は頭を下げた。ローグさんは私の顔をマジマジと見てくる。
「カナタ、です…。あの、私お邪魔じゃないでしょうか?皆さんの団欒の場に入っちゃって…」
こんな誰しもが憧れるメンツに私が入っていいわけが無い。するとユキノさんが私の手を握った。
「私がお誘いしたんですから邪魔な訳がありませんよ!…それに、実はおふたりもカナタさんと話したいって言っていたんですよ?」
そう言われてスティングさんが笑った。
「俺らと言うよりコイツだけどな」
ローグさんを指さして笑う。
ローグさんは私を見つめて聞いてくる。
「お前、俺と会ったことはないか?」
へ…?…ナンパでしか聞いたことない。
戸惑っている私にスティングさんが笑いかける。
「コイツ、随分ちっさい頃にカナタ・アマリリスって言う女の子と一緒に居たんだよ。名前のリスト見てその女の子がお前じゃねえかってこの前言ってたんだ」
「はあ…、凄い話ですけど…。私に覚えはないかな…?同姓同名の方なんですかね?凄いですよね」
ワクワクして聞いてくるスティングさんにそう答えるとそっか、と笑った。
ローグさんは少し悲しそうな顔をして私を見る。
「ごめんなさい…、悲しませて」
「お、コイツの表情が読めるのか。珍しいやつだな」
ユキノさんもこくこくと頷いている。そうかな、と考えて首を傾げるとユキノさんは言う。
「私でもお2人と仲良くなったのはつい最近なのでローグ様のポーカーフェイスに迷います」
ふふ、と口に手を当てて笑っている。