第9章 ローグ 「一輪のジニア」
ギルドについて隅の方の空いてる席に荷物を置いてからジュースを買いに行った。
この間剣咬の虎に入ったばっかりだから私にはなかなか仲が良い人がいない。
昔から憧れていたけど厳しい雰囲気があったから私は入る勇気がなく2年近く運送会社で働いていた。
最近の剣咬の虎は雰囲気がガラッと変わって新しく入る人も多いから1ヶ月くらい前に勇気をだして入って
振り出しに戻る…と。
別にここの人たちが酷いとかじゃなくて、むしろ良くしすぎてくれているくらい。
皆気にかけてくれるし、話せる人はいるんだけど一緒にクエストに行けるような人はいなくて。
「難しい…。やっぱ辞めるべきかな…」
ボソッと呟いて頼んだメロンソーダを貰った。
「何かお困りですか?」
後ろから声をかけられて、
「ひあっ!」
と大きい声が出てしまう。
慌てて口を塞ぐとユキノさんが謝ってくる。
ユキノさんは私が入ってきた日にギルドを案内してくれた私の天使。
「あ、すみません!難しい、とか言っていらっしゃったので…。私で良ければ手伝いますよ?」
「いや…、あの…。ちょっと……、ユキノさんみたいに凄い人に私ごときの愚痴を言うのは…」
軽いパニックを起こしてあわあわしているとユキノさんはフフッと笑った。
「んー…、なら、今は普通におしゃべりしません?私カナタ様と話してみたいと思ってたんです」
思ってもみない言葉に感動する。
「良いんですか…?ほんとに?」
「もちろんです!…ちょっと待ってくださいますか?私も何か飲み物を」
そう言ってホワイトソーダを頼んで受け取ったユキノさんと一緒に真ん中の方の席に行った。
「荷物、持ってきます」
「はい。待ってますね」
ニコッと可愛い笑顔で微笑んでくれる。
急いで元の席に戻って荷物を持ってからユキノさんの元に走る。
「ユキノさ」
言いかけて口を閉ざした。
ユキノさんの横にマスターが座っていたから。
楽しそうに話しているユキノさん達を見て私なんかが話かけていい空間じゃない。
……帰る?
どうしよう。
クルッと体の向きを180度変えたときすぐ後ろの人に当たってしまった。
「あ…!ごめんなさい!!怪我は無いですか?」
「ああ」
この声は……ローグさん!
凄い人にぶつかっちゃった。