第8章 スティング 「貴方は貴方」
「ああ!お前にも紹介したいくらいな。今度会ってくれ、な?」
屈託のない笑顔に私も笑みがこぼれる。
「是非。…では、任務完了しました。サインをよろしくお願いします」
そう言うとアルは紙にサインをする。書きながらアルは言った。
「お前も良い人見つけたな。俺よりかっこいいじゃん」
口元を綻ばせて優しい笑顔で言うアル。
遠慮してドア付近に立っていたスティング君を彼氏だと思っているようだ。
言葉に詰まっているとスティング君が後ろからやってくる。
「でしょ?なのになかなか振り向いて貰えないんすよ!」
と大声でアルに言う。
アルはポカン、としてから豪快に笑った。
「そうか!…カナタ。お前変わらないな」
そう言ってアルに頭を撫でられる。頬を膨らませるとアルが依頼書を返してきた。
「ご苦労様でした。カナタ、俺たち今度の土曜に結婚式をあげるんだけど、来てくれる?」
頭を下げてから聞かれる。
「もちろん!」
ニコッと笑うアルを見て私達は家を出た。
「スティング君、気使わせちゃってごめんね。」
村を出て歩きながら言う。
「何すか?アルって人に言ったやつ?」
「そうそう。冗談でもきついこと言わせたなー、って。」
すると肩を掴まれて彼の方に体を向けられる 。
「あれ、冗談じゃないけど?てかへこむ。」
彼の目は真剣そのもので私も目が離せない。
「俺、カナタさんのこと好きです。多分カナタさんのこと全然知らないんだろうけど。大好きです。」
顔が熱くなって自分の手で冷やす。
「…、ありがとう」
そう言ってまた歩き出すと後ろから抱きしめられる。
「俺じゃ駄目?まだカナタさんの心にはあの人がいる?」
泣きそうになりながら私の肩に頭を置く彼。
私は彼の髪を触りながら言った。
「アルはもう大丈夫。じゃなくて、私将来は悪魔の姿に変わっちゃうの。あんな姿愛してくれないでしょ?」
そう言うとスティング君は横に首を振った。
「全部愛します。言ったでしょ?カナタさんはカナタさんだって」
そんな彼に私は胸が締め付けられる。
「…それ、ほんと?私やだよ。好きになった人に嫌われるの、嫌なの……」