第8章 スティング 「貴方は貴方」
「お願い!剣咬の虎から追い出さないで…!ギルドの皆には近づかないようにするから!」
そう言うとスティング君は私の腕を掴む。
「俺が出ていかせませんよ。...アンタ、なんか引け目感じてるんでしょうけどカナタさんはカナタさんなんすから。貴方も俺の家族なんです」
ナツさんの言葉借りちゃった、と嬉しそうに笑う彼を見て気が抜けた私も笑ってしまった。
熱も収まって、外見も人に戻った。でも私達はまだそこから動いていなくて。
「スティング君、もう大丈夫だよ?忙しいでしょ。ごめんね」
と言って立ち上がる。
じゃあね、と別れようとすると座っていたスティング君に手を掴まれた。
「どこ行くんすか?俺もついて行きます」
不安そうな顔で見られるから首を傾げる。
「報告だけど、なんでそんな顔してるの?」
「いや、カナタさん勝手に出て行ったりしねえかな、って思っちゃって」
馬鹿っすよね、と笑う彼の頭を撫でた。
「心配してくれてありがとう。でも私出てけって言われても出ていかないから」
笑ってそう言う私を見てスティング君も立ち上がった。
「……俺が撫でたかったっす」
「えー?……ていうか『付いてくる』って言ってもらえて助かったかも」
話をはぐらかして歩き出すと後ろからスティング君も走って来て横に並ぶ。
「なんでっすか?」
「依頼主、私が好きだった人でさ、もう4年近く会ってないから緊張しちゃってて」
そう言うとスティング君の顔がピシッと固まった
「好きな人…、すか。俺邪魔じゃない?」
眉を下げながら聞いてくる彼に私は笑った。
「全然、むしろ有難い!」
「それならいいけど……」
あの村につく。
「ああ、ご苦労様で…、ってカナタ!?懐かしい!会いたかったんだぞお前〜!!」
彼の家に行くと強く抱きしめられた。
いつまで経っても変わらないな。
成長しきった彼の腕の力は強すぎて苦しい。
「待っ、て!……久しぶり、アル」
「お前、どこ行ってたんだよ。急にどっか行くから俺もう居なくなっちゃったと……」
涙目になりながら笑うアルの目元を拭う。
そして、離れてみて分かった。
左手の薬指に綺麗な指輪がついている。
「あー、アル!良い人見つかったんでしょ?」