第8章 スティング 「貴方は貴方」
私も涙がこぼれてくる。
私何で泣いちゃってるの。
下を向いていると体の向きを反転させられる。
スティング君は少し赤くなった目で私の顔を見てから強く抱き締めてきた。
「それでも、俺はカナタさんが好き」
そう言われて目元にキスをされる。
……感情がいっぱいすぎて胸が苦しい。
「……カナタさん。俺の事、信じてくれませんか?」
涙を受け止める彼の手に私の手を重ねて頷いた。
彼は下を向いてしまった私の顔を覗き込むようにかがんでから私の髪を耳にかけて頬を両手挟んだ。
顔を上に向けさせられてスティング君の泣きそうで嬉しそうな顔を見ると私も泣きながら笑ってしまう。
目を閉じると優しくキスをされる。
唇が離れてから何もされないので不思議に思って目を開けるとスティング君と目が合って少し照れくさそうに微笑んでいる。
私の唇を親指で撫でてからスティング君はもう一度キスをしてきた。
今度は長めのキス。
息が苦しくなって彼の胸をトントンと叩くけど全然離してくれない。
「もう、だめ!」
制止をかけるとスティング君は口をとがらす。
「えー、やだ。やっと俺の片思いが終わったんすけど?全然満足してないんすけどー!」
頬を膨らます彼の手を取って歩く。
「今から列車に乗って帰るから、文句言わずに乗れたらまたキスするの許す!」
「あ、……最低。意地悪」
「なら、もうキスしなーい」
冷たい目で見るスティング君を置いて私は走った。するとスティング君も笑って追いかけてくる。
「もう…、分かったよ。我慢しますから、約束は守ってくださいね?」
「もちろん!」
-𝑒𝑛𝑑--------