第8章 スティング 「貴方は貴方」
闇ギルドの討伐
闇ギルドの目の前に来て私は魔力を溜めた。
フーッと息を吐くと体中が熱くなっていく。
右半身には鋭い爪が、角が、尻尾が、牙が生えてくる。
私の右目はただ真っ黒に染まって顔は溶けたように醜くなっていく。
ただ手を振り下げただけでギルドに炎柱がたつ。そこから広がっていく火の海に私は走った。
抵抗する闇ギルドの人達に慈悲も与えず酷く倒していく。それこそ悪魔のように。
もう意識がない人を何度も何度も殴って焼いて。
戦っている時の私はもう1人人格がある様な。
闇ギルドを崩壊させ、私は一人炭の中で立っている。
「化け物…ね。」
今聞いた最期の言葉。慣れたいけど何度言われても傷ついてしまう。
「闇ギルドのお前らに言われたくねーよ」
とスティング君の口調を真似てみる。
「はは、似てなー…」
笑っていると急に心臓がドクンッと脈打った。汗が止まらなくなって頭がクラクラする。
「あ、れ?もうそんな時間……?」
昔からの熱が来る時間のようだ。
鞄を漁るが無い。あれ、薬忘れた…?
立っていられなくなって膝まづくと、後ろから声がした。
「死ね!!」
ハッと後ろを振り返ると火傷まみれの女の人が剣を私に向けて走ってくる。
立たなきゃ。そう思うのに立てない。
手に力を入れるがそれも虚しく私はうつ伏せに倒れてしまった。
お医者さん、お母さん、お父さん。
私もうこの人生終わらせていい?
心の中で聞きながら目をつぶると
「白竜の咆哮!!」
と白い咆哮が飛んでくる。
女の人に命中して彼女は倒れた。
が、この魔法は……。
咄嗟に地面に顔を突っ伏する。
さっきまで戦っていたから痣も、角も、何もかも残ったままなのに。
「おい!薬!!」
そう言って体を起こされるが残りの力で顔を腕で覆う。
背中に手を回してスティング君は怒った。
「何してんすか!薬飲まないと!!」
「やだ…!見ないで!」
いやいやと首を振っているとスティング君は悩んでから言う
「〜っ!わかったすよ!俺絶対見ないんでこれ飲んで!」
水と薬を私に握らせてそっぽを向くスティング君。
私は何とか薬を飲んだ。
すると後ろを向いたままスティング君は言った。
「俺、見てたっすよ。全部」
そう言われて冷や汗が止まらなくなった。