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短編 フェアリーテイル

第8章 スティング 「貴方は貴方」


「ダメだよ!私にして!」


そう言うがもう私には見向きもせずに彼らはあの部屋にアルを連れていった。

アルを追いかけて私も鍵が開きっぱなしだったあの部屋に入ったは良いもののどうしようもできないから息を潜めて見る。


「やめろ!…何すんだっ!!」


アルの手足に拘束具が付けられる。
暴れているアルの後ろから見たことがない男の人が出てきた。
その人は気持ち悪いくらい真っ赤な小さいラクリマを持ってきていた。

闇ギルドの人はアルの腕を少し切ってあのラクリマを埋め込もうとした。


「い゛ってえ!!……熱い!!何っ!?」


アルが大声で叫ぶ。
痛いよね、アル!待ってて!

私は震える足で全力で走った。
アルは目を見開いて叫んだ。


「カナタ!何で……!」


その声を聞かずに私はアルの中にあったラクリマを取り出した。


「いっ……!」


「ごめん!」


痛みに顔を歪めるアルに謝ってから私はラクリマを飲み込んだ。


「カナタ!」


私を取り抑えようとした人たちが離れる。
体が熱く熱く、ただ熱くなっていく。


そこからあまり覚えてないんだけど物凄い爆音が聞こえたから様子を見に来た人が言っていた。
私はただ佇んでいて、アルを抱えていたらしい。
闇ギルドの人達は跡形もなく消してしまった。

その人に病院に連れていってもらうとアルはラクリマの弊害で今回の事件の記憶が無くなった。

ただ、こう言っていたらしい。


「気味の悪い化け物が俺らを助けた。今までにないくらいの怖い生物が」


それを聞いて私は不思議に思った。
そんなことあったっけ?私も記憶障害?

しかしそれは違うようで、私はあの日から何故か毎日酷い熱を出すようになった。
それと共に赤黒い痣も出るように。

魔導師専用の医者の所に行ったところ、


「んー…、これは闇ギルドの奴らが開発してた……?もしかして、これ体内に入れた?」


あの時見たラクリマの写真を見せられる。
頷くとお医者さんは頭を抑えてから優しく私の頭を撫でた。


「そーか。ごめんな。俺じゃ治せない。ごめんな。…辛いよな……。ほんとにごめんね」


何なのか分かってない私よりもお医者さんの方が辛そうで私は焦って微笑んだ。


「大丈夫です…!」


そう言う私にお医者さんは首を横に振った。



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