第8章 スティング 「貴方は貴方」
ある日闇ギルドの人達は私と1番仲が良かった女の子に外に出してやると言っていた。
「なんで?私たちは出られないの?」
「そうだよ!俺らも出してくれ!」
一緒にいた男の子、アルも同意するが闇ギルドの人は横に首を振った。
「まだダメだ」
「ごめんね。2人とも……」
謝っているけどどこか嬉しそうな顔をしている。
...別に良いけど、私だってそうなるし。
村に戻る前に一つだけやる事があると言われ、彼女は嬉しそうに闇ギルドの人について行った。
2人が入ったのは私も中は見たことがない部屋で。
10分くらい経ったあと奥の部屋から小さく、くぐもった悲鳴が聞こえた。
そして、闇ギルドの人だけが外に出てきた。
彼女に何をしたのか聞くと面倒くさそうに、
「裏口から帰したんだよ」
と一言言った。
嘘だと思った。
アルも私の方を見ていて、彼の怯えたような目で確信した。
寝る時は私達だけにされるので2人で話す。
「…帰してくれるって言われたら終わり」
「そうだね」
私達は手を繋いで薄い布団に寝転んだ。
私はとても強く握られた手を握り返した。
「…もしも私が連れていかれそうでも何もしなくてもいいから」
「は?俺お前が居なくなるのは嫌だ」
こんな時なのに胸が苦しくなった。
「…私も、嫌だから。アルが居なくなるの」
小さい声で呟くと彼は目を見開いて嬉しそうに私を抱きしめた。
「こんな時だけど嬉しいな」
アルの顔も私の顔も凄い真っ赤だった。
「絶対、2人で生きような」
そう言われて私は頷く。
その夜はとても安心して過ごせた。
そして、その1年後、
「カナタ、家に帰らせてやる」
闇ギルドの人達が2人で居た所に声をかける。
私たちは顔を見合わした。
「…いや、カナタも俺も帰らなくていい」
そうアルが言うと闇ギルドの人は私の腕を強引に掴んだ。
連れていかれそうになるがアルが咄嗟に私の反対の腕を引っ張った。
彼は男たちを睨んで言う。
「帰らねえって言ってんだろ。貴方たちに何の不利益もないはずだけど」
「……じゃあ、お前でいい」
彼らはアルを指さす。
アルは息を飲んだ。そして、頷いた。
「…でも条件がある。カナタだけは本当に村に返してやってくれ」