第8章 スティング 「貴方は貴方」
「カナタさん!」
これから行くクエストを受理してもらってから他のクエストも見てみようとクエストボードを見ているとスティングが遠くから駆けてくる。
「あ、スティング君。お疲れ様!」
私は受理された紙を後ろに隠す。
どうやら彼はクエスト終わりのようだ。まだ受付に報酬貰いに行ってないのかな。
「早く受付行かなきゃ。せっかく行ったんだから受理してもらわなくちゃでしょ?」
「そうなんすけど、俺、今日こそカナタさんとクエスト行きたいんすよね。待っててくれません?」
……また、そういう事か。懲りないな。
「そう…、だね。んー、どうしようかな」
悩んでるふりをしながらクエスト板を見る。スティング君は私の目を見て言った。
「あ!カナタさんクエスト選んでるっしょ!!待ってくださいって!」
スティング君は急いで受付に走っていく。それを見て私はダッシュでギルドから出ていった。
「あー!カナタさん!!待ってよ!!!」
という声だけがギルドから聞こえた。
そのまま列車に乗ってクエスト先へ行く。
ふう……、とため息をついて座った。
別にスティング君が嫌いなわけじゃない。むしろ慕ってくれてるのは可愛いくらい。
なんだったらローグ君やユキノちゃんでも逃げる自信が大いにある。
これにはちゃんと理由がある。......長旅だしちょっとだけ思い出してみようかな。
昔、私がまだ子供だった頃、村の皆と遊んでいた時に闇ギルドの人達に捕まった。
私だけじゃなくて、一緒に遊んでいた他の3人も。
闇ギルドに着くと一人の子が大号泣してどこかへ連れて行かれた。
その子はその後帰ってくる事はなかった。
私たちは何もされるか分からないまま、比較的普通に育てられた。
ご飯はでるし、お風呂やトイレもいける。
何で拉致されたのかも分からず1年が経った。