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短編 フェアリーテイル

第4章 ガジル 「どんな時も」


あの日から何年も私は彼を慕って生きてきた。
そんな事を思い出してから私は天井を見上げる。


「何で帰ってこないの?」


私はガジルの家の寝室で丸まっていた。
ガジルは私を置いて行ってしまったのか。



夜、玄関の扉が開いた音がした。
私はベッドに寝たフリをした。


「…」


いつも出迎えるはずの私が寝ているからかガジルは少しそこで止まってから部屋に入ってきた。


「寝てんのか?」


ガジルは私の頭を優しく撫でる。
胸がキュッと苦しくなる。


「…起きろ。寝てないだろ。分かってんぞ」


その声色にも息が詰まりそうなほど苦しくなった。
ギュッとガジルに抱きつく。


「…フッ、ほらな。…それで何で拗ねてんだ」


私の顔を手で掴んだ。
私はガジルの服を引っ張って口を開いた。


「何で正規ギルドなんかに入るの?生ぬるいのは嫌いって言ってたのに」


そう言うとガジルの顔が真顔になった。
そして私から少し離れた。


「…知ってんのか」


ガジルの声が酷く冷たくなって怖くなる。今さっきよりも強く彼の服を掴んだ。
するとガジルが私の手を握った。


「…すまん。オレは妖精の尻尾に負けて、そこに入ることになった。…だから、ここから出ていく」


「行かないで…!」


ガジルの顔が少し歪んだ。


「でも俺はお前が嫌いな正規ギルドの人間になる」


そんな事でガジルを嫌いになるものか。


「…良い。そのくらい良い!私の傍からガジルが居なくなるのはやだ……!!」


涙が溢れ出てくる。
その涙をガジルは指で救う。


「……そうか」


そう言って微笑んでくれる。私はガジルに聞く。


「まだ…、出ていくとか言う?」


するとガジルは笑って言った。


「もう言わねえ。出てけって言われたら考えるが」


「言わない!」


もう!とガジルを叩くとそのままベッドに倒れ込んだ。
え?私そんな強く叩いた?

顔を見ると彼もまた涙で顔を濡らしていた。


「え、ごめん!痛かった?」


「…怖かった。カナタに嫌われることが」


そう言って腕で目を隠している。
そんなガジルの上に跨った。


「…私、ガジルが好き」


彼の息が一瞬止まる。そしてもっと涙を流した。


「…泣かすんじゃねえ」


「ごめんね」


そう言って私はガジルに抱きついた。


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