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短編 フェアリーテイル

第4章 ガジル 「どんな時も」


悔しくってガジルをめいっぱい叩く。


「…痛くねえ」


ケロッとした表情で私を見てくる。私は嫌悪を思いっきり顔に出した。
嫌って言ったのに!!


「うぅー…!!」


何度も何度もガジルを殴るがガジルは顔色変えずに私の顔を見つめるだけ。

なんだか馬鹿らしくなって涙が出てきた。

お兄ちゃん…、ほんとは生きてないんだよね。
そう思って下を向くとガジルはまた私の頭を一撫でした。


「…その首についてる奴死んだんだろ?」


私の頭を撫でながら聞いてくる。私ももう何の抵抗もなくペンダントを見る。


「…そう」


あれ、声出る。
ガジルの手も止まった。


「…?」


キョロキョロと辺りを見回している。


「…ガジル?」


「……お前か!?」


「うん」


目を丸くして驚いているガジルに私は笑った。


「お前、思ったより可愛い奴だな」


笑う私の顔を見て真顔でそんなことを言われた。
恥ずかしくなって顔を背けるとガジルは私の顔を追ってくる。
後ろを向いたら後ろに、横を向いたら横に。


「何で着いてくんの!」


「お前が急に目合わせねえからだろ」


顎を持ち上げられ強制的に目が合う。
グッと顔の距離が近くなって更に顔が赤くなってしまった。


「ちょっ…と、近い…!」


「顔赤いぞ?…熱か?」


もう心臓がもたない。
ガジルを思いっ切り突き放してとりあえず逃げようと思ったけど、ここ変な人しかいないからやめとこう。


そして私が一番聞きたい事を聞くことにした。


「ねえ、私が倒れてた道の先の街、何か噂たってる?」


ガジルは私から少し離れて椅子に座りこんだ。


「ああ、…そうか。お前あの街から逃げてきたのか」


合点いって心なしかスッキリしているようだ。


「あそこの魔物って大きい音に寄せ付けられる習性があるらしいな」


少し考えてから私は慄然とした。
もしかしてあんなに魔物が集まって来たのは私が叫んでたから?お兄ちゃんが叫んで走ったのもそのせい?お兄ちゃんは分かってたの?


「うん…。そっか....。私、お兄ちゃんに逃がしてもらったの」


私がそう呟くとガジルは黙り込んだ。


「お兄ちゃん。私のせいで死んじゃった」


口から自然とそんな事が零れ出る。


「お前に兄貴を殺せるのか」


感心したように見てくる



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