第1章 ナツ 「あの宝石」
馬車に揺られながらいつの間にかニコニコ笑顔に戻っていたハシラさんと話す。
「今までも、助けてくれるって人いました。でも皆逃げるか死んだかのどちらか。…もしも怖かったら、僕らにバレないように帰ってください」
ナツは怪訝そうに眉を顰める。それを見たハシラさんはハッとした顔をして慌てて首を振った。
「あ、失礼でしたね!...でもこれまでの事が.....」
眉を下げて少し微笑むハシラさんにナツが言った
「俺たちはお前らを助ける為にここに来たんだ!逃げるような奴は俺たちのギルドには居ねえ!」
自慢気に鼻息荒く話すナツにハシラさんは笑顔になった。
「…ありがとう。ナツさん」
…ナツのこういう所が尊敬できる。仲間を恥ずかしがらずに褒めれるとこ。
「…私も、絶対に逃げません!」
ハシラさんは目線を下に落とした。そしてすぐに満面の笑顔を私たちに向けた。
「………はい!…絶対に逃げないで。僕の大事な村を助けてください!」
馬車がゆっくりとブレーキし始める。
目的地に近づくほど周りがより一層暑くなりはじめて汗がとまらない。
「僕が案内できるのはここまでです」
ハシラさんが言うと御者さんが先にドアを開けてくれる。そして、私の手をとって降ろしてくれた。
「…段差に気をつけてください。先程は申し訳ありませんでした。……どうかお願い致します…」
小さく頭を下げた御者さん。
もしかしたら私達も逃げる人だと思っていたからあの態度だったのかもしれない。
ハシラさん達はここから少し離れたところまで戻って待つことになっている。
ナツは「メシ用意しとけよ〜!」と笑顔で両手をブンブンと振っている。
それを見たハシラさんも「了解です〜!」両手を振っていた。
2人で馬車が見えなくなるまで見送った後、
ナツが叫んだ。
「さあ…!燃えてきたァ!!」