第1章 ナツ 「あの宝石」
村に着いて道端のおばあちゃんに村長さんの場所を案内してもらった。ナツは大きい建物を見て興奮しながらドアを何度か強めに叩いた。
「ああ、フェアリーテイルのギルドの方かな?」
少しくせ毛の若い褐色の男の人が出てきた。
「あの、村長さんはいますか?」
私がそう聞くと男の人はキョトンとしてからすぐに照れくさそうに頭を搔く。
「僕、なんです。ハシラって言います」
「えっ?そうなんですか!失礼しました…!」
慌てて頭を下げるとハシラさんも何故かペコペコ頭を下げた。そしてにっこり笑う。
「いえいえ、よくあるので気にしないでください」
お互いが頭を下げていると帰っていくおばあちゃんに手を振っていたナツが口を開く。
「んで、化け物ってなんなんだ?」
するとハシラさんの顔付きが変わった。それを見た私たちの表情も固くなる。
「鬼のような面をつけた、化け物なんです。狙われてるのは親父世代の年配の人たちで...。今朝は俺の親父が...」
先程のニコニコ笑顔は消え去り不安げな表情になった。震える手を自分の服を掴むことで隠そうとしている。
「僕らの村を助けてください...!」
頭を地面に擦り付けてお願いされる。私はハシラさんの手を掴んだ。
「頭を、上げてください」
ハシラさんは私の手をギュッと握る。ナツもハシラさんの背中に手を置いた。
ナツと私は2人で顔を見合わせる。そしてハシラさんに聞いた。
「「ソイツ今どこ?」」
ハシラさんは顔をバッと上げた。そして私たちの顔を見て涙を流した。
馬車を呼んでもらい御者さんが扉を開ける。しかしその御者さんはお世辞にも態度は良くなくて。
でもナツはもちろん、ハシラさんも気にしてなかったようだから私も気にしないようにした。