第3章 ラクサス 「想い出の歌」
次の日、私がカナ達と話していると後ろからお腹の前に手を差し込まれる。そして丸太抱きされた。
「え?なに!?」
バタバタ暴れているとその返事はなく代わりに
「コイツ借りてく。」
あの無愛想な声で一言だけ残された。
「カナタ何かしたのか?」
とグレイの心配する声と合掌しているカナが見えた。
「…たく、お前聴きたくねえのか」
ラクサスがいつも居る定位置に座らされて小突かれる。
「ごめん…。なんか機嫌悪そうだったから話しかけるの怖くて」
「……なんだそりゃ」
そう言って溜息をつかれる。もっと怒らせた…?
「ごめん…」
「怒ってねえ」
「……ごめん」
ついまた謝ってしまった私の頬が掴まれる。
「怒ってねえって言ってんだろ」
「怒ってるじゃん…」
「…次謝ったら殺す」
「ええ!?」
理不尽な殺害予告をされながらラクサスが持ってきてくれた音楽用ラクリマを貰った。
「…どうやって使うの?」
「そんなんも知らねえでどうやって生きてきたんだお前?」
そう言いながらも使い方を説明してくれる。
そして1人で使えるようになるとラクサスは立ち上がった。
「じゃあな。それやるから」
…もう行くの?せっかく話してるのに。
前までの私なら思わないことを思った。
「…どこ行くの?」
「あ?…どこだって良いだろ?」
「そう…なんだけどさ。せっかくラクサスと仲良くなれたのに、もう終わりなのかなって」
そう言ってラクサスの腕を掴むとラクサスは少し固まった。
「…誰も終わりとは言ってねえ。また話しかけに来たらいいだろ」
手を振りほどかれてラクサスはギルドから出ていってしまった。
しかしその言葉からラクサスの優しさを感じた。
それから私はラクサスが1人でいる時話しかけるようになった。
「ラクサス!」
ラクサスはチラッとこちらを見てから自分の横に視線を落とす。『ここに座れ』っていう意味。
横に座ったら私はグレイやカナと何してたとか他愛もない話をした。
でもそれを咎める事もしないで居てくれる。
でもマスターの話をした時だけは別だった。急に立ち上がってまた居なくなってしまう。
だから極力私はマスターの話をしなくなった。
ラクサスが私の横に居ないのは寂しかったから。