第3章 ラクサス 「想い出の歌」
しかし、あの曲…懐かしい。
ラクサスのヘッドフォンから零れた曲、聞き覚えがある。
お父さんが大好きで私にも聞かせてくれてた曲。
いつもお父さんが歌ってたから自然と私もお母さんも覚えていた。
題名を覚えてないから分からなかったのだがラクサスに聞けばもう一度あの曲を聴ける…?
そう思った私はまたラクサスのもとへと歩いた。
「…ラクサス!」
声をかけても返事がない。余程大きい音で聴いているのかな。耳が壊れちゃうじゃん。
不意にラクサスの黄色の髪が気になった。
…今なら触ってもバレない?
そっとラクサスの髪に手を伸ばす。見かけによらずふわふわしている。
が、それを感じた瞬間私はラクサスが座っていた木箱に押し倒されていた。
「…お前さっきからカナの野郎と何してんだ」
「…え?」
なんで分かったんだろう。
「俺で遊んでんじゃねえよ」
ギリギリと掴まれた腕が締められる。
「いった…い!」
何とか抜け出そうとするも手はもちろんラクサスが私のお腹に乗っているため足も出せない。
「ごめん…。でも今回は違くて。どうしても聞きたいことがあって…!」
「…俺がそれに答える義理はあんのか?」
少し間が空いて聞かれる。
「いやー…それはわかんないけど」
そう答えるとラクサスは顔を背けた。フッと息が漏れている。
「…なんで笑うの?」
「いや、そうバカ正直に答えるんだなと思って」
馬鹿にしているのか。しかしラクサスが私の上からどいて手を離してくれた。
「場合によっちゃあ答えねえ。...で?」
「今さっき聞いてた曲教えて」
そう言うとラクサスは少し目を開いてから考える。
「確か『my dear treasure』…。知ってんのか?」
...!それだ!!
「うん!!大好きな曲なの」
私は涙が出そうになって瞬きを繰り返す。お父さんとお母さんが最後に歌ってくれた曲。
「…その曲入ってるラクリマ持ってるから明日持ってきてやる」
ラクサスは私の頭に手を置いた。
「良いの!?」
「そんくらいならな」
少し微笑みかけられる。
「ありがとう!」
お礼を言うとラクサスはまたヘッドフォンをつけ直した。
「…ありがとう」
私はもう一度お礼を言ってラクサスの元から離れた。