第3章 ラクサス 「想い出の歌」
私がギルドに入ってきた頃にはもうギルドにいた貴方。
普段は1人で音楽を聴いているし話しかけたらあの鋭い眼で睨まれるから好んで話しかけなかった。
いや、だいぶ苦手だった。
ある日、カナと負けた方がラクサスに話しかけるというジャンケンをした。
気が乗らなかったからやめとけば良かったのに。負けたのは私だった。
「はは!勝ったあ!…さ、早く行ってこいよ!」
勝ったカナは上機嫌に私の肩を叩く。私がギロッとカナを睨むとサッと目を逸らされた。
「怒られたらどうしてくれるの…」
溜息をつくとカナが笑う
「どうもこうも、アンタは負けたんだよ。さっさと行ってきな!楽しみだ」
他人事だから楽しそうに話している。恨めしい、絶対後で怒ってやる。
でも嫌なことは早めに終わらせるが吉だ。私は1人音楽を聴きながら目を瞑っているラクサスの肩を叩いた。
「…あ゛ぁ?なんだ?」
ヘッドフォンを外さないまま目をこちらに向けてくる。
「…あの、…えっと」
特に話す用事もないから私はしどろもどろしていた。するとヘッドフォンを外して睨まれる。
「…なんだよ?用が無いならどっか行け」
カナの方をチラッと見るも笑って手を振るだけ。…ええ?どうしたらいいの?
私の視線を追ってラクサスもカナを見る。
そして何かを察したかのようにラクサスは私に背を向けてヘッドフォンをつけ直した。
「ラクサス…?」
肩を叩いてみるもこっちを見なくなってしまった。
ほんと冷たい人だな、と思ってカナの方へ行く。
「カナ!!もうどうしたらいいか分かんなかったんだから!!」
頬をふくらませながら怒るとカナは笑った。
「いや、でも凄いよ!機嫌悪そうだったのに殴られなかったじゃないか…!」
いや、そこ?
...てか機嫌悪かったら殴られるんかい。
「分かってて行かせたのか…」
「あ、…いや…、まあ良いじゃないか!」
カナはニッコリと貼り付けた笑顔でどこかへ走っていってしまった