第24章 ジェラール 「プレゼント」
チョコケーキとイチゴショートケーキを見せる私にジェラールも微笑んで頷いた。するとジェラールは悩むような素振りを見せた。
「そうだな。…カナタはどっち食べたい?」
そう言われて私は素直に食べたい方を指さす。ジェラールは懐かしそうに笑みを浮かべた。
「やっぱりな。昔好きって言ってたもんな」
そう言って私が指さしたケーキを手渡してくる。が、ふとジェラールもこっちを食べたいかもしれないと思って私は提案した。
「…やっぱり半分こにしよ?」
「………そうだな。半分ずつにしよう」
その間に私達は微笑んでケーキを食べた。
食事も終わり、布団を敷いて寝る準備をしている時に私は何気なく聞いてみた。
「ねえ、ジェラールはクリスマスは好き?」
私の質問にベッドの用意をしていたジェラールが一瞬止まった。そして私の方へ向く。
「…そうだ。お前、覚えてるか?」
ジェラールの少し辛そうな笑顔に心当たりはなくて、私は首を傾げて聞き返す。
「…何を?」
「………カナタが居なくなった日の翌日。クリスマスだったんだ。お前がいなくなった人の朝、少しばかり豪華なご飯を貰った記憶がある」
そう言われてハッとする。確かにあの日はとても寒かったし、翌日、何かのパーティをしていた気もする。
「…そう、だっけ?」
「………そうだよ」
一気に静まり返ってしまった。気まずくて少し寝室から出ようとすると後ろから抱きしめられる。
「凄い怖かったんだ。カナタが居なくなる時も、
居なくなった後も」
耳元でそう囁かれ私は胸が締め付けられる。私を抱きしめるジェラールの手を握った。
「…ごめんね、ジェラール。…でも、私も辛かったんだよ」
そう言うとジェラールは私の体をよりいっそう強く抱きしめる。彼の声は震えていた。
「……分かってるつもりなんだけど…、お前を離すとまた帰ってこなくなりそうで怖いんだよ」
ジェラールは私の体の向きを変えて正面から抱きしめた。私もジェラールの背中に手を回して背中をトントンと叩く。
「お前が…俺を頼ってくれなかったって…最初は思った。ミリアーナが泣いてる横で、俺は……お前に怒りを覚えた」
ぎゅっと服の布を掴まれる。私は無言でジェラールの背中を撫で続けた。