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短編 フェアリーテイル

第24章 ジェラール 「プレゼント」


「シーナさん!」


手をギュッと握るとシーナさんも弱々しく握り返してくれる。私はいつのまにか涙で顔を濡らしていた。シーナさんは私の目元を震える手で拭う。


「……ダメじゃない。また後であのクソ親父に会うんでしょ?」


冗談交じりに言うシーナさんに私は無言で手を握りしめたままだった。するとシーナさんは口を開く。


「……ごめんね、カナタ。私、病気だったのよ。…前に話したクリスマスの話……覚えてる?」


私はシーナさんの質問に頷く。シーナさんはそれを見て微笑んだ。


「私ね、クリスマスが大好きなの。……クリスマスは…、彼と初めて体を重ねた日なの」


思い出すように離すシーナさんに不安になって手を握るが今さっきのような力も無くなっている。


「……とても幸せだった。身分も全く違う私達だったけど、隠れながらだったけど、……幸せだったのよ。……でも、彼は死んでしまった」


柔らかく微笑むシーナさん。私の方にゆっくり向く。


「私は昔、あのクソ親父の婚約者でね…。私がその婚約を蹴ってあの人と結婚したから。…私のせいであの人は死んでしまったの。……ああ、恨んでるかしら。迎えに来てくれないかもしれない」


シーナさんの事を初めて教えて貰えた。きっと身分の高いお嬢様だったんだ……。


「迎えに、来てくれます……。きっと」


その言葉を聞いてシーナさんは少し微笑んだ。


「……貴方は、きっと幸せになれるわ…。私が魔法をかけてあげる」


ついに目を閉じながら話し出す。身動きひとつ取らなくなった体。シーナさんはなんとか口を開いた。


「貴方はいつか必ず、クリスマスの日に愛している人に出会えるわ」


頷きながら彼女の手を必死に擦って暖めようとしていた私を、一瞬見てから彼女は微笑む。


「貴方の好きな人…、見てみたかったなぁ…」


そう言い残して彼女は命を落とした。



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