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短編 フェアリーテイル

第23章 ゼレフ「約束」


壊れかけた学院に私は横たわっていた。
起き上がって辺りを見回すとカビやツタが少し建物に這ってきている。

ゼレフの能力がこうした…?

とりあえず立ち上がって学院から出てみるも、周りに生えていた木々は全て無くなっている。
あまりにも変わってしまった風景に怖くなった。

ゼレフに会いたい。

そう強く思って近くにある街へと歩き出した。



……ここもどうしてしまったのか。

建物がほとんど黒い塵になっていて、近くを歩く度に塵が舞う。

何処か寂しく感じてきてプルを召喚する。
ここはたまにプルと買い物に来ていた場所。
その場所が消えてしまったのが分かったのか、抱っこをねだってきたのでしゃがみこんで抱き上げた。


「ゼレフ、どこ行ったんだろうね」


「プーン…」


プルの顔を見ながら街をぬけていく。ここからはもう行く宛がない。学院に居た時はあまり遠出はできなかったし。

…てか教授達どこに行ったんだろう?
もしかして皆死んじゃった?

あまり他の人たちに思い出はないから特に悲しいとかも思わないけど知り合いが居ないのは心細い。

とりあえずここの近くにもっと大きい都市があったはずだからそこまで歩くことにする。



何日か歩いていると何となくゼレフが通った場所が分かるようになった。

彼がここで夜を過ごしたんだろう。
動物の死骸と灰になってしまった木々を見るとこっちに来てたんだと嬉しくなった。


「お腹すいたな…」


小さく呟く。もう何日もお肉を食べていない。
ゼレフが行ってないであろう道にあった木の実もそこを尽きる頃だ。

死んじゃうかも。

そう考えながらも何故か死ぬ前にゼレフに会える自信はあった。




また何度目かの夜を迎える。

空を見上げて歩いていると開けた場所に1つの明かりと人影を見つけた。


「…?」


目を細めるとそこにはゼレフらしき男性が1人で座っていた。


「ゼレフ!?」


つい叫んでしまうと彼は勢いよく振り返った。そして私を見つけて目を見開く。


「カナタ!…近づいてくるな」


一瞬微笑んだ気がしたけれどすぐに顔を引きしめて後ろへ下がって行ってしまう。

私のすぐ近くの草が腐り始める。ゼレフはそれを見て更に離れていく。


「やだ…。待って」


せっかく会えたのに。



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