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短編 フェアリーテイル

第23章 ゼレフ「約束」


「……ありがとう、ございます」


もう一度深く頭を下げると彼は頷いてから忠告をしてくれる。


《今日はここでゆっくりして行くと良い。明日には現世に返すぞ》


「…はい!ありがとう!!」


彼の姿が見えなくなると皆ドッと体の力を抜いた。


「はぁ…、アンタよく初対面で星霊王と笑顔で話せるね。怖くないのかい?」


アクエリアスにそう言われて私は彼女の顔を見る。頭の血が抜ける気がして肩を掴んだ。


「星霊王だったの!?」


「…え」


他の人たちも若干引くくらいの表情で見てくる。
私は恥ずかしくなって唇を突き出した。


「…だって見た事ないし……」


「それよりカナタ様。お腹は空いて居られませんか。よろしければここの名物料理を用意しますよ」


唐突なバルゴの提案につい頷く。
そう言って用意を始めるバルゴと共に何人かがここから外れるとアクエリアスは私の横に座ってニヤッと笑った。


「んで、ゼレフとか言うのは良い男なのかい?」


「えっ…」


咄嗟に熱くなる顔をプル隠すとアクエリアスは更に悪い笑みを浮かべて聞いてくる。


「隠すことはないじゃないか。言えよ〜」


「うぅぅ〜…、かっこいいよ?優しいし」


私が顔を赤くして手で仰いでいるとアクエリアスは満面の笑みを見せてくれる。


「何だ、アンタ可愛いじゃないか!!ゼレフ、好きなんだろ?何処まで行ってるんだい」


ぶっ飛んだ質問に頭がパンクしそうになる。
……手とかは繋いだことはあってもゼレフはそんな雰囲気にならないし。

案外真剣に考えてしまっている私。
それを嬉しそうにニヤニヤ見るアクエリアスの肩を誰かが軽く叩いた。


「ご飯の用意できたらしいぞ。…あんまからかってやんなよ?」


すると今までのアクエリアスの表情が豹変。恋する女の子の顔になっている。

先に行くスコーピオンの背中をぼんやりと眺めるアクエリアスを今度は横から私がニヤニヤ笑う。


「ご飯…行こっか。……それと、スコーピオンはいい男なの?教えてよ」


すると今度はアクエリアスが顔を赤くした。私はつい笑ってしまう。


「アクエリアスも可愛いじゃん!後でもっと話そうよ。他の子も交えたりしたいな」


アクエリアスの手を引いて皆の元へ走る私を見ながら彼女は優しく微笑んでくれていた。


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