第23章 ゼレフ「約束」
翌日からゼレフと今までよりも長く一緒にいることが増えていった。
「仔犬…思ってたのと違う」
仔犬座の星霊を召喚すると震えた雪だるまみたいなのが出てきた。
私は鍵を手に眉を下げながらゼレフを見る。すると彼は急に後ろを向いた。
「…ふっ、……はは!」
肩を震わせながら笑うゼレフに頬を膨らませると彼は慌ててこっちを見た。
「ごめんね。……はぁ、面白いな」
見に涙をためながら笑う彼と落ち込む私。
ゼレフは私の背中を擦りながら聞く。
「どうして落ち込むの?」
「……何か失敗しちゃった?」
私が呟くとゼレフは優しく微笑んだ。そして震えながら私達の顔を見ていた仔犬を抱き上げて私に見せてくる。
「そんな事ないよ。可愛らしい子じゃないか。…もし失敗だとしても、唯一無二の僕たちだけの子だ」
ニッコリ笑いながら言われて私も仔犬を見る。
仔犬は首を傾げながら私を見る。
……可愛いのかは分からないけど、ゼレフがそう言うのなら可愛いのだろう。
私は仔犬をゼレフから受け取って考える。
「……名前、『プル』にする」
「…可愛い名前。……よろしくね。プル」
プルの頭を撫でて机に向かう彼。
私もプルを抱いてついて行った。
その日の調べるべき事は終わった。
プルがどのように鍵から出てきてどのように帰るのかを観察して資料にまとめる。
ずっとプルを召喚して帰らせて、を繰り返していたから魔力の消費が激しくて疲れる。
眠たくなってきてカックンカックン首を揺らしているとゼレフが私を見る。
「眠い?後は僕がやっておくよ。ありがとう」
ニッコリ微笑んで私の手元から資料を取る。私がついその手を拒むとゼレフは首を傾げた。
私は下を向きながら言った。
「…こういう事しか出来ないから最後まで自分でやりたい。ゼレフばっかり難しい事してるもん」
ゼレフは下を向いたままの私の背中を撫でた。
そして優しい声で話す。
「僕はそんな事思わないけどな。こうやって僕が資料を作れるのもカナタのおかげだよ。プルをずっと召喚してくれるんだもんね。…今日だけでも早く休むべきだ」
そう言われて私はしぶしぶ頷いてゼレフの部屋から出ていく。
彼は作業途中の資料を持って私を見送った。