第19章 ミストガン 「君ならいつも」
リリーは振り返って咄嗟にジェラールを隠すような位置に立った。そして話し出す。
「俺がアニマを逆展開させ」
「お2人がアニマの逆展開を止めようとしていると聞きました!しかも、城下町には何者かによって破壊されています!どうか指揮をとってください!」
甲冑の男は言う。私は話が分からず首を傾げた。
しかしリリーとジェラールはなんの事か分かっているようで、でも混乱したような表情で甲冑の男が走り出したのを追いかけ始めた。
着いていくと見えたのはボロボロになった城下町。そこで暴れていたのは大魔王ドラグニルと名乗る男。
そう、ナツだった。
ナツは王冠をつけてマントを被って人を脅している。よく見るとウェンディも。
訳が分からないまま見ているとナツが私たちを見つけた。
そしてジェラールに殴りかかる。
「待っ、」
「しー!」
いつの間にか後ろにいたウェンディが私の服の裾を握って人差し指を立てている。
とりあえず頷いて見てみる。
ナツは魔法は使わないし、拳での戦いだ。
ハラハラしながら見ているとジェラールの1発がナツの顔面にクリティカルヒットした。
「痛そう…」
私がそう呟くと、仰向けに倒れるナツ。
周りにいた人達は一瞬静まり返った。
そして歓声が上がる。
「王子様バンザイ!!」
「おかえりなさい!!」
口々に王子様と呼ぶ声が聞こえた。私がジェラールの方を見るとジェラールは手でおいで、と私を呼び寄せる。
何が何だか理解出来ていない私を見てジェラールは寂しそうに笑った 。
「カナタ。ごめんね今まで。急に居なくなっちゃって」
民衆の声のなか、謝罪の声が聞こえる。
「…ごめんで済まない。私は傷ついたんだから…。だから今度は一緒に居て?」
そう言ってジェラールを見上げると苦しそうに微笑む彼の顔が見えた。
「カナタ。悪いけど、俺らはお別れしなきゃいけない。君はあっちの世界の人間だから帰らないとね」
私の頭を撫でてそう言う彼。
あっちの世界、と言うことはジェラールは元々こっちの世界の人間だったようだ。
「...やだ」
「......変わらないね。カナタは」
涙を目に溜める私の頭を撫でるジェラール。
私はナツ達に囲まれた。するとナツ達の体が透け出した。