第19章 ミストガン 「君ならいつも」
森の奥に入って休めそうな草むらに私を降ろすとお兄ちゃんは私と少し距離をおいて座った。
「…君、毒の魔法持ちか?」
「…魔法?持ってない…けど」
昔お母さんが言っていた。魔法を使える人達が悪い人をやっつけてくれるって。
そんな場所があるって。
お兄ちゃんは考え込んだ。
そして口を開く。
「じゃあ、今初めて使ったんだな。君は毒の魔法を使えるらしい」
私の方に近づいて座り直している。
私は首を傾げながらお兄ちゃんを見ていると
「俺はジェラール。君は?」
名前を聞いてくるので私は小さく答えた
「カナタ」
「そうか。カナタ。俺とこれから冒険に行こうか。君を引き取ってくれる人を探そう」
彼は私の手をひっぱって立たせた。
そして今度は手を繋いで歩き出す。
「いつまでも抱っこはしてあげないからな?」
彼は笑いながらこっちを見た。
それから数年が経った。
「ジェラール!見てみて!熊取ってきた!」
焚き火の用意をしているジェラールに仕留めてきた大きな熊を見せる。
彼はこっちを振り向いてから笑った。
「凄いな。よし、仕込みだ」
「仕込みだー!!」
2人で熊を食べやすく切ってから竹を刺して焚き火の中に入れる。美味しそうに焼けてきたころ、彼は私を呼んだ。
「カナタ、おいで。ほら」
と竹串に刺さる肉を私に向けた。落ちないように慌てて食べる。
「いただきます!…熱っ。美味しい!!」
「はは、表情コロコロ変わるな。焼きたてだから気をつけて食べな?」
と私に水を差し出す彼も熊肉を食べた。
それからまた数年、ある村に着いた。
いつものように必需品を買い出していると近くにジェラールが居ないことに気づく。
「…ジェラール?」
お金を払って村中探すが何処にもいない。
するとこの村の村長さんが声をかけてきた。
「彼ならもう居ませんよ」
「え……?」
村長さんは私を見ながら微笑んだ。
「貴方は時々知らずの内に毒を出してしまうらしいですね。…この村の人達は特段毒に強いんです。ここで育ててやってくれ、と頼まれましてね」
…毒なんて私いつ出してたんだろう。
ジェラールは私を捨てたの?
昨日まで楽しく話してたのに。
…それならお礼くらい言いたかった。