第19章 ミストガン 「君ならいつも」
お母さんがよろけて転んだ。慌てて私の無事を確認してから微笑んで話し始めた。
「カナタ。先に行ってて?多分…鬼さん増えてるから…。隠れながら行くこと。わかった?」
「え…?お母さんも一緒に行かなきゃ…」
「お母さんはね…。ちょっとダメみたい。貴方がこのゲーム終わらせなきゃ」
今もあちこちで銃声が響いている。
お母さんの足からは血が溢れていて。
「あ、鬼が来ちゃう。…早く。隣町の皆とお母さんを鬼から助けに来て?」
微笑むお母さんに頷いて私は走った。
少し休もうと民家に入ると鬼ごっこと言うには恐ろしすぎるくらい銃弾が貫通した跡や血が飛び散っている。
ここに居ちゃダメだ。本能がそう言う。
慌てて外に出るとマントの人に出会ってしまった。
「…あ」
私を捕まえようとする鬼。動けないでいると誰かから手を引かれた。
「おいで!」
少し年の離れたお兄ちゃん。お兄ちゃんは私を抱き上げて走った。
隣町に着いた。
お兄ちゃんと2人で私の街に何があったか教えると隣町の人達は評議員に情報を送ってくれた。
「大変だったね。…助かってよかった」
そう頭を撫でられた。そして私は思い出す。
「そういえば、お母さんがまた助けにきてって…このゲーム終わったよね…?行かなきゃ!」
多分私もゲームじゃないことくらい分かってたはずなんだけど、信じたくなくてそう言った。
私の街の方へ振り返って走り出した瞬間お兄ちゃんと街の人に止められた。
街の人が言う。
「…ゲームじゃないよ。お母さんはそう言ったのかもしれないけれど。君が言う鬼は奴隷を集めている悪い人達だ」
私の目線にしゃがみこんで肩を掴んだ。
つい下を向く。
…じゃあお母さんはどこに行っちゃったの?
「もうあの街には帰らない方が良い。ここの街の人達が君1人くらい養ってくれるはずだよ」
お兄ちゃんが私の頭を撫でた。私が上を向くと皆も笑顔で私の顔を見ている。
…私は街の全部を捨てなくちゃいけないの?
お母さんも友達も、おじさんもおばさんも全部なかったことになったの?
何故かその時ブワッと何かが私の心で溢れた。私の周りに紫っぽい霧が出る。
「!?すぐにここから離れろ!!」
お兄ちゃんは街の人にそう言って私を抱き上げてまた何処かへ走って向かった。